(連載1)日本のロヒンギャ危機対策を評価すべき5つの理由
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(連載1)日本のロヒンギャ危機対策を評価すべき5つの理由  ツリー表示
投稿者:六辻 彰二 (神奈川県・男性・横浜市立大学講師・40-49歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-02-07 09:56  
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No.3459
 1月13日、河野外相はミャンマーのラカイン州マウンドーを訪問し、現地のロヒンギャと面談。その前日12日、河野外相は同国の事実上の最高責任者アウン・サン・スー・チー氏とも会談しました。スー・チー氏との会見で河野外相は、ロヒンギャ難民の帰還支援のために300万ドル、ラカイン州の人道状況の改善や開発のために2000万ドルを、それぞれ提供すると約束。その一方で、難民の帰還状況をモニターすることに合意したうえ、外国メディアや国際NGOのラカイン州への立ち入りを認めるようスー・チー氏に要請しました。日頃、筆者は日本政府の外交政策に疑問を呈することが少なくなく、ロヒンギャ危機への対応についても批判的に論じてきました。しかし、今回の訪問と合意内容は、これまでの日本と比べるとかなりチャレンジングなもので、高く評価すべきと思います。そこには大きく五つの理由があげられます。

 第一に、ミャンマー政府とロヒンギャ難民の双方とコンタクトしたことです。ロヒンギャ問題をめぐっては、各国間で態度が分かれてきました。欧米諸国やイスラーム諸国がロヒンギャ危機を「民族浄化」と呼び、これに関与したと目される高級軍人を対象とする制裁も実施されています。これに対して、同国への経済進出で西側諸国をリードする中国やインドなどは「内政不干渉」の原則からミャンマー政府を擁護し、むしろロヒンギャの武装勢力を「テロリスト」として批判してきました。この対立軸のなか、日本は中国などと同様、ミャンマー政府に理解を示し、ロヒンギャの武装勢力を批判してきました。しかし、今回の訪問で河野外相は「被害者」であるロヒンギャ難民とも接触。「武装勢力は認められないが、難民支援は重視する」立場を示したといえます。この立場に基づき、今回実現した河野外相のラカイン州訪問は、外国要人としては初めてのものです。ミャンマー政府・軍はメディアやNGOを含めて外国人のラカイン州への立ち入りを制限してきました。2017年11月下旬から12月上旬にかけてミャンマーを訪問したヴァチカンのフランシスコ法王でさえ、ミャンマー政府への配慮から、ロヒンギャ難民とはバングラデシュの難民キャンプで会見しています。ロヒンギャ危機の解決を促すには、双方の当事者と関係を築くことが大前提になります。この点で日本のアプローチは、ミャンマーとひたすら対立するわけでも、これをひたすら擁護するわけでもないもので、今後の調停を主導する第一段階をクリアできたといえます。

 第二に、難民帰還を促すことで危機の克服を加速させようとしたことです。2017年11月、ミャンマー政府とバングラデシュ政府はロヒンギャ難民の帰還に合意。60万人以上にのぼる難民受け入れの負担に不満を募らせるバングラデシュ政府の立場を、後ろ盾である中国やインドも支持するなか、ミャンマー政府は「バングラデシュからの不法移民」と呼び続けてきたロヒンギャの受け入れに同意せざるを得なかったのです。ミャンマー政府がロヒンギャを「国民」と認めないことに変わりはなく、帰国しても再び迫害される懸念は払しょくされません。そのため、ロヒンギャ難民の間でも帰還に向けた動きは鈍く、合意そのものが実現しない恐れがあります。とはいえ、バングラデシュからの帰還はロヒンギャ危機の終結に向けた重要な糸口であり、この糸が切れれば事態のさらなる悪化が懸念されます。その意味で、今回河野外相が難民帰還への支援を表明し、これを加速させようとしたことには、重要な意味を見出せます。

 第三に、これに関連して、難民帰還後の長期的な平和の定着に向けた道筋をつけられたことです。先述のように、帰還したロヒンギャが安全・安定した生活を送れるかは未知数です。ロヒンギャ危機に関して、欧米諸国は個人の人権や暴力からの解放を最優先にする傾向があり、これはこれで重要な課題です。しかし、襲撃がなくなることだけでなく、衣食住といった最低限のニーズを満たせる生活再建も、危機の長期的な克服には必要です。ところが、この点にスポットをあてる国は必ずしも多くありません。今回河野外相はスー・チー氏との間で、特に帰還後のロヒンギャ支援として女性の所得向上に向けた訓練などを約束しています。「紛争における弱者」になりやすい女性に特化した支援には、ロヒンギャ・コミュニティの安定にとっても重要な役割を果たすと期待されます。日本と同様の立場の国にはインドがあげられ、同国も12月に仮設住宅の建設を含む2500万ドルの支援を約束しています。ロヒンギャ危機に関して日本とインドは立場的に近いことから、今後の協力の可能性も視野に入ってくるといえるでしょう。(つづく)

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