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(連載1)消防飛行艇と防衛装備の輸出  ツリー表示
投稿者:佐藤 有一 (静岡県・男性・軍事評論家・70-79歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-02-13 14:36  
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No.3463
 総務省消防庁が消防飛行艇の導入を検討しています。これは海上自衛隊の救難飛行艇US-2を改造して消防飛行艇とする計画のようです。US-2は陸上・水上のどちらでも離陸水、着陸水できる飛行艇です。毎時100km程度の低速度で飛行することができ、波高3mの海面に着水できる能力を持っています。航続距離も4500kmと長く、海洋における救難活動に活躍しているのはご承知の通りです。消防飛行艇としての運用は、大規模山林火災、大規模地震による市街地火災、乾燥強風下の市街地火災、離島火災、船舶火災など陸上での消火が困難な大規模火災に対して、湖や海で水面を滑走しながら取水し、火災現場上空に移動して放水・消火するものです。大規模火災が発生すると陸上の交通が渋滞して消防車が動けなくなり、消火活動に支障をきたす事態になることをよく耳にします。そのような状況においても、上空から消火活動ができる消防飛行艇は頼もしい存在と言えます。現状では、山林火災は都道府県の消防部門の防災ヘリコプターにより航空消火していますが、運搬できる水量は2トン程度で消火効果は限られたものです。US-2改造の消防飛行艇は最大15トンの水量を運ぶことができ、火災現場まで高速で進出し、近くの湖や海から取水して火災現場上空で放水することが可能であり、短時間のサイクルで繰り返して消火することができます。消防飛行艇の消火能力は、カナダや米国などの乾燥地域での山林火災の消火で実証されています。しかしながら、日本では消防飛行艇が使用された実績がなく、総務省消防庁が消防飛行艇を運用していくためには、いくつかの高いハードルが存在します。それらの難しい問題を、ひとつひとつ解決していかなければ、日本における消防飛行艇の配備と運用は実現できないでしょう。

 第1に、US-2の機体価格が1機あたり100億円以上することです。さらに消防飛行艇への改造費用が必要になります。また、飛行艇の整備には特殊な設備と整備技術が必要になります。これらの費用を総務省消防庁が負担することは不可能でしょう。従って、実際の消防飛行艇の配備と運用は海上自衛隊が行い、総務省消防庁が委託する形になるのでしょうが、費用の分担、出動要請の手順など取り決めなければならない問題が山積することでしょう。海上自衛隊に新しい任務として消防飛行艇の運用を追加するのですから、それに伴う予算処置が必要です。機体の取得、消火のための教育・訓練、自衛隊員の増員に伴う費用などを防衛予算の中から捻出しなければなりません。

 第2に、日本においては消防飛行艇を運用してきた実績がありません。運用ノウハウが無いということになります。運用に必要な体制・組織の設立、運航・取水・消火に伴う法律、航空消火を指揮管制するためのヘリコプターの配備と運用基準、航空消火活動の手順・安全管理基準などを、何も無い所から作成しなければなりません。まずは早急に、海外の消防飛行艇を運用している国々での運用状況を調査研究して、日本の実情に合った方策を見つけ出す準備をすることです。

 第3に、大規模火災の消火であっても、実際の消火活動は各都道府県の消防部門が実施することになっています。消防飛行艇の出動が必要な大規模火災が発生した時に、どのような手続きで海上自衛隊に消防飛行艇の出動を要請するのでしょうか。出動要請の判断が遅れれば火災は拡大してしまいます。出動した消防飛行艇は単独で航行して消火活動ができるわけではありません。火災現場上空の報道関連のヘリコプターや送電線などとの衝突を避けるために航空管制を行い、火災の状況や風向きを考慮して最適な消火位置を指示するためのヘリコプターが必要です。そのためには、各都道府県の消防部門が防災ヘリコプターを使用して、消防飛行艇による消火活動を指揮・管制する任務を担当するしかありません。総務省消防庁内に、これらの任務を統合的に管轄する部署を設置し、消防飛行艇の運航・消火のための運用基準を作成して、各都道府県の消防部門に周知・連携できる体制を確立しなければ、消防飛行艇の実際の運用は困難でしょう。(つづく)

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