e-論壇「議論百出」 e-論壇「議論百出」 グローバル・フォーラム グローバル・フォーラム
 「議論百出」へようこそ。投稿へのコメントでないご意見は「新規投稿する」ボタンをクリックして投稿してください。
 なお、投稿記事を他所において引用、転載する場合は、その記事の出所が当e-論壇であることを明記してください。

投稿日で検索  //// 
キーワードで検索   
※キーワードはスペースで区切って複数の言葉を入力できます。
  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | *タイトル一覧 | 投稿一覧]
(連載2)リラ急落で中国に急接近するトルコ ← (連載1)リラ急落で中国に急接近するトルコ  ツリー表示
投稿者:六辻 彰二 (神奈川県・男性・横浜市立大学講師・40-49歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-12 00:00 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
No.3604
 人民元の普及は、習近平体制が推し進める「一帯一路」構想の柱の一つでもある。もともとトルコは「一帯一路」構想に(少なくとも表面的には)協力的で、2017年5月に中国で開催された「一帯一路」国際会議にエルドアン大統領はプーチン大統領らとともに出席していた。リラ急落を機に金融面でもトルコ経済に影響力を伸ばすことは、中国にとって「一帯一路」構想を加速させるものとなる。また、既に中国はトルコ経済に深く食い込み始めている。中国屈指の情報通信企業ファーウェイはトルコ・テレコムと共同で5G回線の普及を進めており、宅配サービスのアリババも事業を開始している。リラ急落はこれら中国企業にとって、トルコ企業買収を加速しやすくする。そしてなにより、「アメリカの横暴」に直面するトルコやイラン、さらにロシアを糾合した運動を展開することは、アメリカと張り合う大国としての立場の確立にもつながる。こうしてみた時、香港に拠点をもつアジア・タイムズ(2018年8月10日電子版)が「中国がトルコを買い叩く」というコラムを掲載したことは不思議でない。

 ただし、トルコの要請に中国が一方通行で傾くかは疑問だ。実際、エルドアン大統領のラブコールに中国政府はこれまでのところ公式の反応を示していない。もともと中国とトルコの間には、浅からぬ因縁がある。両国は新疆ウイグル自治区をめぐって対立してきた。中国西部の新疆ではウイグル人の分離独立運動があり、中国政府はこれを「厳打」と呼ばれる苛烈な弾圧で取り締まってきた。これに対して、ウイグル人が民族的にトルコ人に近いことから、エルドアン大統領は「大量虐殺」とさえ呼び、しばしば中国を批判してきた。この経緯を抜きに、困った時だけ臆面もなく協力を求めるエルドアン大統領に、面子を重んじる中国が「手を差し伸べない」ことで罰を与えようとしても不思議ではない。

 それだけでなく、自分のペースでなく「反米連合の旗頭」に祭り上げられるのは、中国にしても痛し痒しである。中国にとって、長期的には「一帯一路」構想の重要性は揺るがないが、少なくとも短期的にはトランプ政権との貿易戦争の収束も重要な課題だ。国際通貨基金(IMF)の統計によると、2017年段階の中国からみたアメリカとの貿易額(5886億ドル)は、トルコ、ロシア、イランの三ヵ国との間の貿易額の合計(1433億ドル)をはるかに上回る。

 つまり、現状においてアメリカとの関係改善の必要に迫られる中国にとって、トルコの都合に引き回されるのはリスクでもある。そのため、英キングス・カレッジ・ロンドンのソン・シン博士が指摘するように、トルコ支援が中国にとってチャンスであるとしても、それはトルコ経済の根本的な建て直しより、「アメリカの一方的な行動は認めない」という政治的ジェスチャーに傾きやすいとみられる。こうしてみたとき、少なくとも短期的には、エルドアン大統領のラブコールに中国はせいぜい表面的な対応にとどめるとみてよい。しかし、トランプ政権との貿易戦争が長期化し、アメリカとの関係改善にかかるコストが大きすぎると中国政府が判断した場合、「一帯一路」構想を優先させても不思議でない。それはトルコと中国が恩讐を越えて、これまで以上に接近する可能性を大きくする。だとすれば、制裁を受ける反米国家の結束が強まるかは、中間選挙に向けて各国との対決を演出してきたトランプ政権が、中間選挙の後に貿易戦争をなし崩し的にスローダウンさせるかにかかってくる。トランプ政権の敵が増えるかは、トランプ政権次第なのである。(おわり)

No タイトル 投稿者 日時
3652 (連載2)時間経過と共に日本国が不利となる日中経済 ←  (連載1)時間経過と 倉西 雅子 2018-11-14 11:33
3651 (連載1)時間経過と共に日本国が不利となる日中経済関係 倉西 雅子 2018-11-13 12:50
3650 (連載2)なぜいま中国向けODAを終了したか ←  (連載1)なぜいま中国向け 六辻 彰二 2018-11-13 12:47
3649 (連載1)なぜいま中国向けODAを終了したか 六辻 彰二 2018-11-12 16:25
3648 (連載2)日中通貨スワップ協定再開の危うさ ←  (連載1)日中通貨スワップ協 倉西 雅子 2018-11-09 10:47
3647 (連載1)日中通貨スワップ協定再開の危うさ 倉西 雅子 2018-11-08 12:47
3646 疎外されるイタリアのリスク 岡本 裕明 2018-11-07 10:51
3645 (連載2)リーマンショックについて ←  (連載1)リーマンショックについて 真田 幸光 2018-11-06 11:14
3644 (連載1)リーマンショックについて 真田 幸光 2018-11-05 13:47
3643 (連載2)中国はなぜいま少数民族の弾圧を加速させる ←  (連載1)中国はなぜ 六辻 彰二 2018-11-02 11:16
3642 (連載1)中国はなぜいま少数民族の弾圧を加速させるか 六辻 彰二 2018-11-01 11:16
3641 (連載2)アメリカの対中FTA阻止条項要求 ←  (連載1)アメリカの対中FT 倉西 雅子 2018-10-30 11:38
3640 (連載1)アメリカの対中FTA阻止条項要求 倉西 雅子 2018-10-29 14:32
3639 国際二宮尊徳思想学会曲阜大会に参加して 池尾 愛子 2018-10-28 09:37
3638 中国本土の覇権と新興国について 真田 幸光 2018-10-26 12:32
3637 (連載2)NAFTA⇒USMCAに思う ←  (連載1)NAFTA⇒USMCA 緒方 林太郎 2018-10-25 12:24
3636 (連載1)NAFTA⇒USMCAに思う 緒方 林太郎 2018-10-24 16:22
3635 (連載2)日米貿易摩擦から中国が学んだこと ←  (連載1)日米貿易摩擦から中 六辻 彰二 2018-10-23 11:06
3634 (連載1)日米貿易摩擦から中国が学んだこと 六辻 彰二 2018-10-22 16:09
3633 英国の末路 岡本 裕明 2018-10-19 14:59

  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | *タイトル一覧 | 投稿一覧]