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2009-04-21 00:00
(連載)攻守所を変えて泥沼化するタイのデモ (2)
関山 健
東京財団研究員
ところで、「反独裁民主同盟」がパタヤで首脳会議の妨害を行った際、なぜ治安当局は各国首脳が滞在する会場ホテルへの侵入を易々と許したのか、その理由がいま一つ解せない。各種報道によれば、当日パタヤには大勢の兵士や警官が配備されていたにもかかわらず、デモ隊が中韓首脳の滞在するホテルを取り囲んでも、ASEAN首脳の滞在するサミット会場ホテルに侵入しても、治安当局はデモ隊を強制排除することなく、ただただ見つめるばかりであったという。
治安当局がパタヤにおいて反政府デモ隊を排除できなかった理由として、現政権には昨年末に国会を包囲したり空港を占拠したりしたPADの責任追及をしていない弱みがあると指摘する向きがある。「PADの無法を放置した政府と軍は、今回、反独裁民主同盟が首脳会議の妨害に動いても、強く出ることができなかった」というのである(4月12日の朝日新聞朝刊)。
また、アシピット首相が反独裁民主同盟を力ずくで封じ込めるようなことをすれば、反独裁民主同盟に同情的な世論が形成され、アシピット首相としては自身の政治的立場を危うくすることも考えられる。実際、昨年10月にPADが国会を包囲した際には、当時のタクシン派政権が強制排除を敢行したために大勢の死傷者が出て、政権批判が強まる結果となった。これら要因に加えて、筆者は、治安当局が内部で分裂しているのではないかと見ている。バンコクの中間層や軍・官僚などのエリートを支持層に持つ反タクシン派の現政権は、そのお膝元たるバンコクの軍や警察はコントロールしているにせよ、地方の治安当局は十分に掌握しきれていないという。
また、今回パタヤにおいては警察を中心に治安回復にあたり、軍は警察の補佐としての配備であったが、もともとタクシン元首相は警察官僚の出身であることから、警察内部には彼に同情的な人間も少なくないとも聞く。東南アジア情勢に詳しい早稲田大学アジア研究機構のキム・ベン・ファー客員研究員は「バンコクの治安当局は王室と現政権に忠実だが、タクシン派の中には、地方の軍・警察はバンコクと足並みが揃っていないと見て、そこにデモ遂行のチャンスを見出している向きもある」と筆者に語った。
こうした治安当局内部の分裂のために、反政府デモはパタヤにおいて言わば見逃され、バンコクに至ってはじめて強制排除されたのではないだろうか。(つづく)
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