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2009-10-28 00:00
(連載)国際化されるインターネット・ガバナンス(2)
内海 善雄
前国際電気通信連合事務総局長
そもそもインターネットは、アメリカの軍事技術から発展したものであるが、全世界の人々が使用するようになった現在でも、アメリカの一非営利組織であるICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が、インターネットを使用するために不可欠なドメイン名やIPアドレスの配布を独占し、また、ルート・サーバーと呼ばれるインターネットの中核設備の管理などを独占的に行っている。世界に13個あるルート・サーバーに登録されているアドレス情報は、すべてアメリカにある親センター(ルートサーバーA)のデッド・コピーであり、このセンターの情報を操作すれば、地球上の誰の通信でもコントロールできる。すなわち、インターネットは、このICANNにより完璧に支配されているといえる。
2003年にジュネーブで開催された国連情報社会サミットで、中国、ブラジル、南アフリカなどの途上国側は、「ICANNがアメリカ政府の影響下にあり、インターネットはアメリカ政府の支配下にある。これは、ナショナル・セキュリティー上、大問題である。何とか改善をしなければならない」と主張した。そして、インターネット管理のうち、技術的問題を除く政策的な問題はICANNから切り離し、ITUなどの政府間組織に移管することを強く訴えた。また、現実問題として、ICANNのIPアドレスの割り当てが途上国にとって不公平であることなども主張した。なかでも、ブラジル代表は雄弁で、そのスピーチは、開発途上国の人たちの啓蒙に大変役立つものであった。一方、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ各国などは、「これまでと同じ民間主導を堅持すべき」として途上国の主張に反対した。急速な技術革新が進むインターネットを管理するには、柔軟な体制で効率的に作業を進められる現在のICANNがベストとであるという考え方である。
2005年にチュニジアで開催された国連情報社会サミットでは、それまで現状維持を主張していたEU諸国が、従来の態度を変更し、インターネット管理の国際化を訴え、現状を是とするのは、米国と英、カナダ、オーストラリア、シンガポールと、ごく少数の国のみになった。両者の間で意見は鋭く対立したが、サミットの最終文章として「奇跡の合意」と呼ばれる一定の合意がなされた。その内容は、「インターネット・ガバナンスが民主化や国際化されなければならない」との原則を認め、かつ、国連事務総長によるインターネットに関する「より強力な協力」が必要であるとしたこと。しかし、具体性のある記述は皆無で、何ら実効性のないものであった。さらに、上記原則を認めながらも、「現状がうまく機能している」という現状容認の文言もあり、内容的にはまったく自己矛盾。それぞれ異なる立場の意見を並立させ、国連に「インターネット・ガバナンス・フォーラム」を設立して、引き続き議論を継続するというものであった。
その後「インターネット・ガバナンス・フォーラム」は3度開催されたが、焦点のない意見の交換が行われただけで、この問題の進展はなかったのである。
しかし、今回、米国政府は、ICANNの管理を、他の国と一緒に構成される政府諮問委員会(GAC)などで、ワン・ノブ・ゼムとなって関与すると発表したのである。この米国の一方的な政策変更がどのような背景で行われたのか、詳らかではないが、オバマ政権の国際社会に対する姿勢をつぶさに反映しているように思える。情報通信(ICT)という狭い世界の中においては、このことだけでも、「ノーベル平和賞」に値するものであると思う。(おわり)
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