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2010-07-22 00:00
(連載)中国のドルペッグ解除に思うこと(2)
小泉 秀人
学生
では、今回のドルペッグ解除後の動きはどうなのか。巷では元高確実の予想だが、それは対ドルとして見た場合は合っているかもしれない。昨年9月から今年2月まで中国の北京にいた筆者は、いかに中国国民がアメリカ経済にあきれ、信用しなくなったかを知っている。そのため、いくらドルペッグ解除となり、より自由な資本移動の動きが出てきても、中国人はドルを自らの資産に組み込もうとはしないだろう。さらに、アメリカ経済の影響から来る円高やユーロ高などの要因を加味すると、先月のドルペッグ解除に相反するように見える対円・ユーロの元安はもっともなことのように思われる。
この元安は日本にどのような影響を与えるだろうか。最近増えている中国企業による日本企業買収の動きが、見込まれていた元高によって進む一方、中国からの輸入が減るとの予想とは反対に、買収の動きは加速せず、中国からの輸入がさらに増える可能性がある。ただでさえ円高による貿易赤字に悩まされる昨今の日本経済にとって、この動きは景気回復へ更なる待ったをかけることになるかもしれない。また、元安だからといって、中国に安い労働力を求めるといった傾向も、考え直す必要がある。最近のホンダやトヨタの中国工場で頻繁に起きている賃上げストのためだ。先見性のあるユニクロなどは、すでにバングラデシュへの工場移転を考えているという。
すでに日本を越えたお隣の経済大国、またG20の要望に応えてドルペッグを解除し、発言権を強めた政治大国の隣国に、これから日本はどう接していくべきなのか。ここまで経済的な話を続けてきた訳だが、経済関係の強化こそ、いま日中に必要なものだと思う。「経済関係」といったが、日本が今回の中国のドルペッグ解除に対して、日本が以前経験した失敗から得た教訓を中国に教え、友好関係を強化するといった意味で使った。日本は1985年のプラザ合意による対ドル円高を誘発され、バブル崩壊まで追い込まれた経験がある。このことに中国当局が「並々ならぬ関心を持っている」という事実が、毎日新聞の報道で7月16日分かった。日本は中国経済を警戒し、経験を踏まえたアドバイスなどを出し惜しみするべきではない。失敗から得た教訓を肴に、中国と酒でも飲むような仲になって、協力関係を強化するほうが、昨今の日中の経済関係を鑑みると、得策であることは間違いない。
余談だが、昨年中国にいた際、沢山の中国人と交流を持つ中で、タクシーの運転手でさえ、「今いかに中国が日本から学ぶべきか」と語るのを聞いてきた。彼らは、「昔日本人が中国に学びに来ていた時代があったが、今は逆だ、我々が日本に学びに行く時代になった」というようなことを言うのである。中国という、並々ならぬ向学心をもった学生を前に、日本はどうしたらよいか。一学生である筆者に言わせると、真剣勝負の教授には、学生も応え、感謝する。そうした関係は、コスト&ベネフィットでつくられる関係とは全然違うものだ。今回のドルペッグ解除は、実はそうした深い関係を構築するための機会を、我々日本人に与えてくれているのではないだろうか。(おわり)
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