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2013-07-10 00:00
集団的自衛権行使を認めても解決しない問題
桜井 宏之
軍事問題研究会代表
集団的自衛権の見直しが、参議院選挙後の政治課題として現実化しそうです。メディア等における議論では、集団的自衛権容認論が勢いを増しているようですが、これらの主張には大きな誤解を1点含んでいるように見受けられますので、それについて指摘しておきたいと思います。それは、集団的自衛権を行使するに当たっては、当該被害国からの要請がまず必要であり、実際の行使までにはタイムラグが生じるという点です。
集団的自衛権容認論の主張の根底には、第1次安倍内閣で設置された安保法制懇が指摘する「平時に公海上で自衛隊艦船と並走する米艦船が攻撃された場合」や「弾道ミサイルが米国に向かうかもしれない場合」に日本がこれを傍観すれば、日米安保体制が崩壊するという危機感にあると思われます。実は、上記いずれの場合も、先に指摘したタイムラグという理由から実際の対処は間に合わないのです。
集団的自衛権行使の要件に関して初めて踏み込んだ判断を示したものとして、国際司法裁判所によるニカラグア事件判決が知られています。同判決では、集団的自衛権の行使に当たっては、当該被害国の要請を発動要件の1つとしています。この要件は、集団的自衛権の行使国による武力攻撃の発生の恣意的な認定を封ずることを目的としたものと理解されています。意外と見落とされていますが、自民党「国家安全保障基本法案」でも、同判決と同様に集団的自衛権の行使の要件として「当該被害国から我が国の支援についての要請があること」(第10条)を定めています。
更に自民党案では、武力攻撃事態法と対になるような「集団自衛事態法」の制定を予定しています。従って、被害国の要請(外交ルートを通じた公式な要請が必要と思われます)を受けた後に、武力攻撃事態法の手続きと同様に、閣議決定、国会承認を経た後に集団的自衛権の行使という流れになると思われます。以上から、集団的自衛権の行使が認められたとしても、こうした手続きを経る必要がある限り、安保法制懇が指摘する事態の対処には全く間に合わないはずです。
集団的自衛権容認の主張には、この点を果たして理解した上でのものなのか、いささか疑問を感じます。
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