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2014-06-04 00:00
野党再編も集団的自衛権にプラス効果
杉浦 正章
政治評論家
政局をみる上での着眼点は、何が焦点で物事が回っているかに絞ることだ。野党再編問題は石原新党側がみんなの党に秋波を送れば、結いの党との合流を目指す橋下新党もみんなとの連携に動くなど、コップのなかの嵐どころか、おちょこのなかの嵐で、動向が見えにくい。しかし着眼点を集団的自衛権の行使容認の是非に絞れば、野党再編側に公明党に取って代わりたいとの思惑があることは、歴然としている。ということは、再編がどう帰着するにせよ、首相・安倍晋三にとってはプラスの作用になるということである。6月2日のBSフジの対談番組は、維新共同代表・石原慎太郎の怪気炎で面白かった。性格的にストレートだから皆本音を語っているといって間違いないからだ。まず石原は安倍について「安倍君は久しぶりに出てきた総理大臣らしい総理大臣だ。死ぬ覚悟でやっている。一度政治的には死んでいるが、一度死んだ人間は強い」と持ち上げた。集団的自衛権の行使容認にまい進する安倍を全面的にサポートする姿勢だ。
そして自らの立ち位置について「自民党の政策はそんなに間違ってはいない。私としては自民党が大事な政策を作る時は無視できないような存在になりたい。自民党を側面からチェックしてゆくつもりだ」と述べた。これは政府・自民党が進める集団的自衛権の行使容認を明確に支持する姿勢である。一方で石原は、集団的自衛権に慎重な公明党について「これまで自民党に対しては公明党がいつかは足手まといになると言い続けてきたが、その通りになった。あんないいかげんな政党はない」と切り捨てるとともに「自民党と公明党が袂(たもと)を分かつきっかけにしたい」とあからさまに自公にくさびを打ち込む宣言をした。石原としては、自民党が過半数を維持している衆院では存在感を発揮しにくいが、参院は過半数割れである。現在は公明との連立で過半数を維持しているが、自民党の114議席に7議席以上プラスできれば、公明党なしでも過半数の121議席以上を確保出来る。ここに着目しているのであろう。閣外協力でもいいから、公明党を排除したい気持ちが強いのだろう。
一方、橋下新党の方はどうか。重要ポイントが5月31日夜の官房長官・菅義偉と大阪府知事・松井一郎の秘密会談である。2時間にわたって食事をしながら会談したのであるから、相当突っ込んだ話し合いをしたに違いない。恐らく集団的自衛権の問題も話し合われただろう。政府としては、維新の分裂で一番懸念されることは、同問題に慎重な結いの党に引っ張られて橋下が左傾化することであろう。もともと橋下は原発再稼働でも反対の立場をとり、石原に説得されて方向転換した経緯がある。分裂前の維新は、みんなの党との間で集団的自衛権の行使容認で一致し、議員立法まで共同で行うところまで行っていた。この方向を維持してもらいたいのが、菅の立場であろう。菅は松井とは極めで親しい間柄であり、“相互扶助”の関係にあると言っても過言ではない。この場面で菅が協力を要請したことは十分ありうることだ。
興味深いのは、この会談を受けるかのように6月3日になって橋下がみんなの代表・浅尾慶一郎に電話して政策協議の再開で一致したことだ。両党は昨年1月に発送電分離など10項目の政策で合意に達している。しかし、橋下の慰安婦発言で、代表・渡辺喜美が協議を凍結してそのままになっていた。電話会談では10項目に加えて集団的自衛権も検討対象とすることになったのだ。これは菅・松井会談の“効果”と見ることが可能だ。政府・自民党内には公明党との調整をめぐって「公明党の酢だのこんにゃくだのは度が過ぎる」(自民党幹部)として「見切り発車論」が台頭しているが、石原新党、橋下新党、みんなの党が集団的自衛権の行使容認支持の方向を維持していることは心強い。見切り発車までは行わなくても、公明党への強いけん制になることは間違いないからだ。22日の国会終幕に向けて、自公の協議は佳境に入りつつある。石原が国会内で代表・山口那津男にすれ違いざまに「苦しそうだな」とからかったら、苦笑いしていたというが、ここにきて公明党が追い込まれているのは間違いない。
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