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2014-10-16 00:00
女性閣僚総崩れで安倍に女難の相
杉浦 正章
政治評論家
「女性が輝く社会」をうたい文句に5人の女性を入閣させた首相・安倍晋三の顔に“女難の相”が浮いてきた。女難には女性にモテ過ぎることによる災いと、女性によってもたらされた災いがあるが、安倍の場合は後者の方だ。女性閣僚が総崩れの様相だ。国会論戦では蓮舫が“女敵(めがたき)討ち”とばかりに、法相・松島みどりの不祥事を追及、口火を切った。野党は5人の女性閣僚に攻撃の的を絞って点数を稼ごうとしている。これをみて自民党副総裁・高村正彦は「民主党の閣僚に対するあら探しというか、火のないところに煙を立てようとする行為は目に余る。政策論争に入らずに、そういうことばかり取り上げるというのは、閣僚の資質の問題というよりも、野党第1党の資質の問題だ」と憤まんをぶちまけるが、これはいわば“一強自民党” の論理だ。なぜなら、自民党もついこの前までそうだったからだ。民主党政権は3年3か月の間に9人もの閣僚が辞任しているが、病気辞任を別にすれば、その大半を辞めさせたのが野党自民党による追及であった。自民党国対委員長・佐藤勉が「今国会は野党がある意味、復活してきた」と述べているが、その見方が正しいのだろう。サソリの本性が刺すことにあるように、野党の本性も刺すことにあるのだ。刺されても耐えるのが強い政権与党なのである。高村の主張には甘えがある。
しかし、この女性閣僚らはそろいもそろって政権のアキレス腱化してしまった。とりわけ松島の旗色が悪い。どう見てもうちわにしかみえないものを「討議資料」と言い張るかとおもえば、東京都内に住みながら特例で居住が認められた赤坂の議員宿舎に帰らなかったり、言動が異常の部類に入る。しまいには10月14日午前の国会で、赤坂議員宿舎入居問題で「私の言動で迷惑をかけて誠に申し訳ない」と陳謝したかと思うと、午後も「うちわ」問題の野党の追及を「雑音」と表現した発言を陳謝。陳謝の連発にさすがの官房長官・菅義偉も「くれぐれも誤解を招くことがないよう留意して発言するように」と口頭で注意するに到った。ただ委員会答弁を観察すればするほど、野党が松島に集中攻撃をかける理由が分かる。読売川柳に「法相の資質団扇に煽られる」とあったが、いいところを見ている。資質に問題があるのだ。女性だからという前に、閣僚としての資質が問題なのだ。この調子で答弁していたら、いつかは討ち取られかねない危うさが見られるのだ。
安倍の好みでもあるのだろうが、女性を選ぶに当たって明らかにその右傾化傾向を重視している。これが反作用となって災いしているのだ。総務相・高市早苗が秋季例大祭に合わせて、言わずもがなの靖国参拝を公言した結果、中国外務省副報道局長・洪磊がすぐさま噛みついてきた。公明党代表・山口那津男が「外交的に課題を引き出すことは避けるべきだ」と述べ、参拝しないよう忠告した。こればかりはその通りだ。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で安倍が中国国家主席・習近平と会う微妙な時期に、閣僚としてあえて中国を刺激するような言動はとるべきではないのだ。女の淺知恵とは言わないが、浅慮も甚だしい。高市は政調会長・稲田朋美とともにナチス・ドイツ・シンパとみられる極右団体の男性代表と議員会館で撮影した写真が、団体のホームページに一時掲載され、欧州などの主要メディアが相次いで批判的に報道した。ただでさえ欧米諸国に安倍の右傾化路線が批判されているときである。英紙ガーディアンが「安倍首相が政権をさらに右傾化させているとの批判に、油を注ぐだろう」との見通しを伝えている。国家公安委員長・山谷えり子も記念写真がやり玉にあがっている。ヘイトスピーチや朝鮮学校襲撃などで逮捕者を出した「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の幹部と写真におさまっていたことが、欧米で大きく報じられたのだ。
質疑中に、民主党参院議員・野田国義が「ねんごろだったんじゃないか」と下品なヤジを飛ばし、安倍が自身のFacebookで「聞くに堪えない侮辱的で下品な野次が野党側から出たことが本当に残念でならない」とコメントしたが、これは相打ち。朝日川柳に「相打ちにしたい“うちわ”と“ねんごろ”を」とあるとおりだ。こうして傷つかないのはただ1人若くて美人の経済産業相・小渕優子だけかと思ったが、とんでもない話が持ち上がっている。小渕の関係する政治団体が、2010年と11年に支援者ら向けに開いた「観劇会」で、費用の一部である計約2600万円を負担していた疑いがあると、16日発売の「週刊新潮」が報じたのだ。事実ならば有権者への利益供与を禁じた公職選挙法違反の可能性がある。昔の政治家がよく使った選挙運動の手口だが、このような古典的な公選法違反がまかり通っていたとは驚きだ。本当なら大問題になり得る。安倍は第2次政権になってから閣僚人事が見事だと思っていたが、女性閣僚の選任は「支持率維持」という“邪心”が働いて、数合わせにこだわりすぎたのだろう。女性を輝かせるため政府は民間企業の役員や管理職への女性登用の数値目標設定を義務づける法案を準備中だが、肝心の女性閣僚がずっこけては、それこそ本末転倒だ。だいたい自由主義社会に数値目標は似合わない。政府は女性が男性と同等に働ける社会へと誘導すればよいのであり、お上(かみ)から押しつけるべきことではあるまい。
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