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2014-11-28 00:00
自民党は温暖化阻止へ「原発再稼働」を主張せよ
杉浦 正章
政治評論家
過去2回の国政選挙と都知事選挙は自民党が原発再稼働を、他党が原発ゼロをそれぞれ前面に出して戦い、自民党の圧勝となったが、今回は原発論争に新たな要素が加わる。それは来年末にパリで開かれる気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)だ。1997年の京都議定書に代わる排出削減の枠組みが決められる。化石燃料による温暖化が原因の大災害が地球上で頻発しており、まさに「地球の存否」が問われる会議だ。既に欧州連合(EU)と米中両国は野心的な温暖化ガス削減目標を提示している。先進諸国の中で日本だけが原発の位置づけが確定せず、目標数値を決められないでいる。「フクシマ」から4年も過ぎた段階ではもう「フクシマ」は理由にならない。提示できなければ日本批判の大合唱となる。この際野党の「原発ゼロ・ポピュリズム」にとどめを刺すためにも、自民党は「温暖化阻止に不可欠な原発再稼働」を前面に押し出して、選挙戦を展開すべきだ。
安全保障上の対峙だけが際立った米中首脳会談で一番驚いたのは、両国が二酸化炭素排出量(CO2)の削減目標で合意したことだ。温室効果ガス総排出量の3分の1を排出している米中は、米国がCO2を2025年までに対2005年比で26~28%削減、中国は30年ごろを頂点に減少に転じさせる。中国が減少に転じさせる目標を提示したのは極めて大きな意義がある。総排出量では増えると見込まれていた中国が、総量で減少に転じると打ち出すのは画期的だ。北京の微小粒子状物質「PM2.5」を含む汚染の深刻さがGDP一辺倒の国をようやく目覚めさせたことを意味する。両国とも原発稼働が前提になっていることは言うまでもない。一方で欧州連合(EU)は先陣を切って1990年比で2030年に40%減という野心的目標を発表した。米中両国の今回の合意で世界各国の削減目標制定作業が加速するのは間違いない。
なぜ、気運が盛り上がってきたかは、温暖化による災害の頻発だ。世界中で未曾有の洪水が続発し、日本でも広島市で発生した土砂災害は、痛ましい限りだ。台風被害も拡大している。米国では史上空前のハリケーン被害が続出。明らかに地球温暖化がもたらす異常気象だ。そして温暖化の主因は、誰が見ても化石燃料が排出するCO2の垂れ流しだ。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書は「20世紀後半に観測された地球温暖化の主因は95%が人間だ」と断定している。ニューヨークタイムズは社説で「原子力に危険が伴うのは事実だ。しかし過去に起こった原子力事故は石炭、ガス、石油といった化石燃料が地球に及ぼすダメージとは遠く及ばない」と主張するに至っている。チェルノブイリの死者は31人だが火力発電の死者数はその何千倍にも及ぶ。大気汚染による肺がんなどの死者数は年間100万人を超え、その3割は火力発電による。これを放置できないというのがCOP21なのである。
こうした中で先進国で日本だけが化石燃料を90.6%も燃やし続けて、温暖化ガスを垂れ流しにしている。それでも世界で通用する、と野党と一部マスコミは思っているのだろうか。冒頭述べたように世界は福島の事故を死者ゼロとみて、日本は事故を抑えつつあると判断している。その事故を理由に温暖化を放置することは全く理由にならない。「化石燃料で電力は足りている」という主張が、再稼働に反対するメディアの論拠になっているが、これも地球規模で物事を見ていない。老朽化した化石燃料発電設備で辛うじて乗り切っているのだ。反対派は再生可能エネルギーの利用を主張するが、電力5社が、太陽発電の買い入れを保留していることが物語っているように、まだ高すぎて、ペイしないのだ。安易に太陽エネルギーに補助金を出していたスペインは財政破たん。ドイツも太陽エネルギーの価格を家庭にのみ転嫁して企業優遇措置を取った結果、反対運動が巻き起こり、矛盾を露呈させている。一方ブラジルのようにオークション制度を取ってキロワットあたり9円にまで値下げに成功した例もある。42円の高固定価格で家庭の電気料金に跳ね返らせてきた日本は、行き詰まったのだ。
原発は来年早々に川内原発が再稼働する。現在全国12原発で19基が再稼働を目指しており、今後もその基数を次々と増やしてゆくべきである。川内は申請から2年もかかったが、ほかの原発はもっと大幅に期間を短縮して、処理されるべきであろう。また新増設や、改修による活用も視野に入れる必要がある。野党の原発ゼロの主張は原発を重要なベースロード電源と位置づける政府・自民党とは全く相いれない。野党は首相・安倍晋三の主導する原発輸出を批判するが、自分で自分の首を絞めていることが分からない。単に日本が儲かるだけではないのだ。福島事故の教訓を生かした深層防護の徹底により、日本の原発の安全性は飛躍的に高まっている。日本の高度な原発製造技術が、中国や東南アジアに伝達されることの方が大事なのだ。かつて中国の原爆実験で日本が放射能被害を被ったように、中国や東南アジアで過酷事故が発生すれば、偏西風でもろに粉じんが日本に至る。地球的規模で見ても中国、韓国の安全度外視原発を世界に広めてはならないのだ。さらに国富が原発不稼働によって年間4兆円も流出する。これがデフレ脱却を目指しているアベノミクスの足を引っ張るのだ。川内原発の再稼働は、地球規模で見ればまぎれもなくクリーン・エネルギーを目指さなければならない人類の戦いの端緒でもある。今回の総選挙でも「原発ゼロ・ポピュリズム」に勝たせてはならない。
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