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2015-09-10 00:00
橋下徹は「10年雑巾がけ」をして首相を目指せ
杉浦 正章
政治評論家
大阪の快男児・橋下徹が中央政界への進出に意欲を燃やし始めたかのようにみえる。9月8日のツイッターで「私人のときの出馬するかしないかや、政治家が引退した後の人生について、こんなこといちいち国民に約束する話ではないし、公約でもない」と述べたのだ。発言が飛躍しているから分かりにくいが、簡単に言えば公約の「政界引退宣言」について言い訳をしているのだ。大阪市長を辞めて私人になってからは出馬するかどうかは公約ではないと言う意味だ。政界引退宣言は「地方政界」引退であって「中央政界」は別ということだろう。首相・安倍晋三から勧められて、「やる気」になってきたようだ。安倍は最近2度にわたって橋下の政界入りに期待する発言をしている。一つは6月14日の夜橋下と大阪府知事・松井一郎との会合で「橋下徹君に対する期待感は前より増しているのではないか」と述べた。もう一つはさる4日の読売テレビで橋下の国政進出について「可能性はあるのではないか」とも述べたのだ。まんざら安保法制を前にした、リップサービスとばかりは言い切れないのだ。「期待感が前より増している」と言うのは、筆者も感じている。
最近では2013年に「慰安婦是認発言」をしたような、ハチャメチャ感がなくなってきて、発言ぶりも「成長」を見せているからだ。中央政界をよく観察して発言するようになってきている。その主張は自民党の政治家と言ってもよいような保守的傾向を見せている。最近の傑作は国会前の3万人デモについて「日本の有権者数は1億人。国会前のデモはそのうちの何パーセントなんだ?ほぼ数字にならないくらいだろう。こんな人数のデモで国家の意思が決定されるなら、サザンのコンサートで意思決定する方がよほど民主主義だ」とツイート。これは今は安保法案が微妙な時期で、物言えば唇寒しの状況にある永田町を喜ばせた。自民党幹部も「代わりによく言ってくれた」とご満悦だった。発言には昔田中角栄に見られた機知がある。安倍が中央政界入りを勧めるのは、おそらく将来の首相候補となり得る素質を見ているからだろう。現在橋下は46歳、政界でもまれれば、ものになるかもしれないということだ。
それでは、その実現への道筋を予測してみると、まず総選挙がいつあるかだが、その前に大阪では年末に府知事選挙と市長選挙がある。おそらく橋下は知事に松井を当選させ、市長には維新系の候補を立てる可能性がある。これに勝ったうえで、国政選挙を狙うことになるが、首相を目指す以上参院では駄目だ。衆院議員はどんなでくの坊でも皆首相になりたいと思っているのであって、参院議員などは下に見ているから、まずなれない。池田勇人に推された宮沢喜一も、1953年の参院選挙に当選したばかりに苦労して、衆院に鞍替えして首相候補扱いされるまでに14年かかっている。橋下の場合は参院比例区なら文句なしに当選するのだが、この比例区選出議員も永田町では馬鹿にされる。要するに、楽して当選しても、誰も尊敬されないのだ。
それでは衆院かというと、来年夏ダブルがあれば文句なしに衆院選出馬がよい。安倍は今後3年の任期中に必ず解散・総選挙を断行するから、ダブルがなければそれを待つのがよいかもしれない。そして国政に進出した場合の対応が、これまた難しいが、道は2つある。大阪維新を率いて、自民党との連立を組むか。同維新とともに自民党に入党して維新派のトップとなるかだ。民主党政権の体たらくを見せつけられた国民は、あと50年は民主党に政権を取らせないと固く心に誓ったかに見えるから、細川政権のように 非自民・非共産連立政権などは期待しない方がよい。すぐに自民党につぶされるのがオチだ。橋下が自民党に入党した場合でも、時間はかかる。石破茂や岸田文雄にはとてもかなうまい。それに大衆扇動型政治家は、自民党ではまず大成しない。むしろ今は、松井一郎の方が、政治家としての器量があるように見える。政界になじんで、それでかつ首相を目指せるようにならないと駄目だ。だから前にも指摘したが、10年間雑巾がけをする覚悟がなければなるまい。10年雑巾がけしても56歳。十分日本を担える年齢だ。
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