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2026-07-04 00:00
(連載1)ロシアにおける体制派と反体制派の認知戦
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
先日、フォーブス・ジャパンで、ベラルーシで最も著名な反体制グループ「サイバーパルチザン」がロシアへの反撃を強めている、との報道をだしました。この報道にあるベラルーシの反体制派ハッカー集団「サイバーパルチザン」とロシアを巡る動きは、現代の戦争が単に兵器を交えるだけでなく、人間の認識や心理を標的にした「認知戦」の舞台になっていることを如実に示しています。
この認知戦の本質は、偽情報や盗み出した機密データを意図的に流布することで、人々の現実認識を歪め、社会を分断し、自国に有利な行動をとらせる、あるいは敵の戦意を喪失させることにあります。ロシア側は伝統的に、サイバー攻撃そのものよりも、それによって得た情報や偽のナラティブをメディアやSNSで拡散する情報工作を重視してきました。既存の社会的な対立や民族的な分断につけ込み、標的となる国々の世論を誘導して政治的な混乱を引き起こすことで、実力行使に頼らずに戦略的な優位に立とうとしています。ウクライナ侵攻の際にも、ベラルーシを足場として軍事展開を進める一方で、国際社会の足並みを乱すための洗練された世論工作を展開してきました。
これに対抗する形で、サイバーパルチザンなどの反体制側も認知戦を展開しています。彼らはもともとベラルーシの独裁政権への抵抗として結成されましたが、ウクライナ侵攻を機にロシアを直接的な標的に加えるようになりました。彼らの戦術は、大規模なネットワーク停止を狙うウクライナのIT軍などとは異なり、システム内部に深く潜入して機密情報を抜き取る点に特徴があります。彼らが奪取したロシア軍の兵站データ、無人機メーカーの機密、さらには政府高官の個人情報などは、単なる軍事インテリジェンスとして使われるだけでなく、ネット上で暴露されることでロシア側の嘘を暴き、その統治能力や軍事的な信頼性を失墜させる強力な武器となります。つまり、隠された真実をあえて白日の下に晒すことによって、ロシアが構築しようとする偽りの現実に揺さぶりをかけているのです。
日本に生きる私たちにとって、これらの応酬は遠い異国の出来事に見えるかもしれません。しかし、ネット工作や認知戦には国境がなく、SNSやデジタルメディアを通じて私たちの日常の情報空間にも容易に紛れ込んできます。私たちが気づかないうちに、どちらかの陣営が意図的に流した情報に触れ、特定のものの見方を植え付けられている可能性があるという点において、この見えない戦争はすでに世界規模で展開されていると言えます。この問題を「すべてがロシアや中国による背後からの操り人形(プロパガンダ)である」という陰謀論的な視点、あるいは「仕掛けられた陰謀である」という仮説から読み解くと、現代の日本社会で見られる世論の分断は、非常にクリアなパズルとして説明がつきます。(つづく)
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