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2008-07-18 00:00
(連載)「自由と繁栄の孤」政策再考(1)
廣瀬陽子
静岡県立大学国際関係学部准教授
日本の近年の外交を考える上で、今は公には使われていない言葉であるようだが、麻生太郎氏が外相時代の2006年に提唱した「自由と繁栄の孤」政策を外すことはできない。それは、米国が推進する「価値の外交」に倣う形で、ユーラシア大陸に弧を描くような形で、民主化やその定着を支援していくという政策だった。「自由と繁栄の孤」という言葉が使われなくなっても、その外交路線の価値は今でも生きている。「自由と繁栄の孤」政策が出てきた背景として、故・橋本龍太郎氏が1997年に提唱した「ユーラシア外交」を考えないわけにはいかない。それは中央アジア諸国やロシア、中国などとの関係改善、深化を目指したものだった。
しかし、筆者が聞いたところによれば、ロシアが前プーチン政権の際に権威主義的傾向を強めたこと、また中央アジア諸国の多くも権威主義的傾向を強め、特に中央アジア諸国については、日本企業などが進出しても、法制度の未整備や汚職の蔓延でトラブルが絶えなかったことなどから、日本政府も企業もそれらの国とかかわっていくことに限界を感じるようになったのだという。そこで、国際関係ないし企業進出・通商などの対象を、中央アジアを越え、黒海周辺地域、つまりEUの近隣諸国にまで広げていくという展望が描かれるようになり、「自由と繁栄の孤」が実現したといえる。この背景に、グルジアやウクライナ、キルギスのいわゆる「色革命」があったことにも留意すべきである。つまりこれらの諸国、および近隣諸国に民主化の価値を広めることができると考えられたことも、この政策が立案されるうえでの大きな前提となったはずである。
筆者は「自由と繁栄の孤」にまさに含まれるコーカサスを専門としており、このような政策を大いに歓迎しているが、今後の日本外交の改善のために2点ほどの提案をしたい。まず、当該地域の民主化が依然として目覚ましい改善を見せていないという点を指摘したい。とりわけ、アルメニアやグルジアで民主主義の後退がみられていること、多くの諸国で汚職が蔓延し、制度の機能不全が起きていること、依然としてロシアの影響下に縛られている国が多いことなどに留意し、より実効的な政策を打ち出してほしい。(つづく)
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