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2008-12-06 00:00
(連載)ソマリアの海賊問題について考える(1)
高村 晴一
団体職員
「アフリカの角」に位置するソマリアは、長年内戦にあけくれ、名ばかりの暫定政府はあれど、事実上無政府状態にあるという破綻国家の典型であるが、ここ数年、その沿岸で海賊行為が急増し、深刻な国際問題となっている。ソマリアは、紅海とアラビア海をつなぐ内海であるアデン湾を抱えており、ここは湾岸諸国から石油を運び出すタンカーや、スエズ運河を通じて欧米諸国とアジア諸国を行き来する貨物船がひっきりなしに通る、まさに海上交通の大動脈である。このアデン湾で、今年に入って、100件以上の船舶襲撃が報告され、35隻の船舶が拿捕され、600名の人員が誘拐されたという。また、支払われた身代金の合計は3000万ドルに上るそうだ。まさに世界一危険な海域である。
ソマリアの海賊行為に加担しているのは、主に地元の元漁民である。ソマリア沿海はマグロなどが採れる良好な漁場を形成しているが、無政府状態にあって海上警備もままならず、国外からの密漁者の餌食となっていた。そこで地元住民は自警団のごとく武装し、密猟者から手数料をせしめたりしていたところ、さらに手っ取り早く金になる「海賊業」に転職したということだ。現在「海賊業者」は、この先真っ暗の国勢の中、ある種のサクセス・ストーリーを地域住民に提供する「セレブ」であり、同時にホテル業や金融業を営むなどして、地域経済を活性化させてもいる。かれらを対象とする経営コンサルタントや会計士ものさばっているようだ。資金を増やした海賊らは、より高性能な武器や通信機器を入手し、ハイテク化を着々と進めているという。
このようなソマリアの海賊行為が、自国のみならず国際社会に多大な損害をもたらすことはいうまでもないだろう。「海賊景気」のあぶく銭にあやかる一部住民を除き、ソマリア人民の多くは飢餓に喘いでいるが、国連の「世界食糧計画」に基づくソマリアへの食糧支援すら、海賊の餌食となっている。国際経済に対する影響は推して知るべしである。世界の運輸業者は、保険金の高騰に苦しむ以外に、石油タンカーや貨物船の航路を、スエズ運河経由から喜望峰経由の航路に転換することも検討しているという。石油やさまざまな物資の価格高騰も危惧されうるし、国際物流自体が不安定化することはいうまでもない。また、現在は、単なる「ビジネス」である海賊業が、いつなんどきテロリストの資金源へと変身するかも予断を許さない。(つづく)
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