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2008-12-07 00:00
(連載)ソマリアの海賊問題について考える(2)
高村 晴一
団体職員
このような事態に、国際社会も黙ってはいない。国連の安全保障理事会は、本年6月に、各国がソマリア領海内での海賊取り締まりのために「必要なあらゆる措置(all necessary means)」を取ることを認めた決議(安保理決議第1816号)を採択し、今月2日、その決議が半年の期限を経て失効することを受け、その決議内容を1年間延長する決議(安保理決議第1846号)を採択した。また、今月8日には、EUが、初めての海上任務となる「アタランテ作戦(Operation Atalanta)」と呼ばれるソマリア沖対海賊オペレーションを開始する。「アタランテ」とはギリシャ神話に登場する勇猛な女狩人のことだ。その他、米国が主導する多国籍の合同任務部隊(CTF150)も、本来任務である「対テロ作戦」に加え、ソマリア沖で海賊の取り締まりに従事している。
我が国としても、このようなオペレーションに積極的に参画すべきであることはいうまでもない。そのための特別法制定や「交戦規則(Rules of Engagement)」等の整備は急務である。ただ、このような活動は、いわばソマリアという重病患者に対して施すべき外科的治療である。「今そこにある危機」への対処が優先されてしかるべきであるが、同時に必要なことは、内科的治療、すなわち破綻国家であるソマリアの国家的機能の再建、つまり治安回復のための警察力の強化等の社会的インフラの整備に向けた国際社会あげての復興支援であろう。ソマリアの現状が対症療法だけではどうにもならない事態である以上、破綻国家の建て直しという「日暮れて道遠し」の迂遠な作業を避けて通るわけにはいかない。
それにしても、世界の一隅で悪さをする一握りの元漁民たちが、これほどまでに国際社会を混乱に陥れたということ自体、驚くべきことである。彼らは国際政治学でいうところの「パワー」とはかけはなれた存在なのだ。今後、同様の事態がいつどこで発生するか、予測がつかないことも問題であるが、はっきりしていることは、このようないわば「リバレッジ型」の脅威がますます国際政治において存在感を増すだろうということである。いずれにせよ、今回のソマリアのケースは、破綻国家がいかに深刻な安全保障上の脅威となりうるか、を国際社会が学んだ貴重な機会であるといえよう。(おわり)
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