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2009-04-14 08:02

「明暗逆転」した自民対民主の構図

杉浦正章  政治評論家
 政界におけるこれほどの「明暗逆転」を知らない。息も絶え絶えだった政府・与党がぶりかえし、当たるべからざる勢いであった民主党が絶望の淵であえいでいる。首相・麻生太郎は、「小沢続投」がもたらした夢のような現実を、まるで壊れ物でも扱うように大切に大切にして、解散・総選挙の決断をしようとしている。今朝の注目点は、NHKの世論調査だ。政府・与党は選挙可能の判断基準を30%台乗せとしてきたが、丁度30%となったのである。官房長官・河村建夫がこれを話題にすると、麻生は「今、はしゃいではいけない。こういう時が大事なんだ」と笑いをかみしめた。民放コメンテーターたちが「10%台に落ちたら、もう上がらない」とまことしやかに指摘してきた世論調査が、各報道機関共通して上がり始めたのだ。

 19.4%まで落ちた小渕内閣の支持率が、地域振興券を配った後に50%台に乗ったケースと似ている。背景には、15兆円の景気対策、北ミサイルへの適切な対応、定額給付金などがある。景気対策は連日の株価の上げをもたらした。しかし、最大の原因は「小沢の第一秘書逮捕・起訴」→「小沢続投判断」にあることは言うまでもない。まず、民放テレビが報道姿勢をがらりと変えた。麻生政権に聞く耳持たなかった姿勢を転じたのである。支持率はまだ上がり続けるだろう。麻生にしてみれば、せっかくの風向きの変化を「はしゃいで」つぶしてはいけないのである。とりわけ、自らの最大の欠陥である「ぶちこわし発言」をせずに、「小沢続投」をいつくしみ育てていかなければならないのだ。

 一方、政党史上まれな誤判断と指摘したとおり、民主党は「続投」のせいで、明るい春なのに暗く曇りがちな「春陰」の日々が続いている。千葉県知事選に次いで、秋田県知事選でも敗北。幹事長・鳩山由起夫は「党本部には、推薦も、応援依頼も一切なく、代表の責任はない」と弁解しているが、なぜ応援依頼がなかったかには言及できない。応援に来られては、困るのである。しかしその鳩山がようやくここに来て「小沢離れ」とも取れる発言をしている。「小沢氏自身が多くの国民にどんどん接する必要がある。例えば、タウンミーティングを行い、厳しい質問に一つ一つ答える姿を見せられるかどうかにもかかっている」という。この発言を、マスコミの多くが小沢への前向き支援というとらえ方をしているが、違うと思う。むしろ逆で、国民の前に小沢を出して、小沢自身に自らの置かれた現実を突きつけようとしているのだ。

 その証拠には、13日の民放ラジオ番組で鳩山は「民主党に勝ってほしいと思う人ほど早く辞めてほしいと思っている。自分自身で判断してもらいたい」と突き放した。鳩山発言が変わり始めたのだ。小沢が国民に接して言い訳をしても、逆効果となることを知っての鳩山発言だ。しかし、小沢は進退の判断のための党独自の世論調査を遅らせた。決断を5月連休後に先延ばしし、「続投」問題のうやむや化を図ろうという狙いだ。そうなると、解散切迫で後継など決めていられない状況になり得る。小沢の「続投」への執念がうかがわれる。自民党にしてみれば、この小沢の姿勢は有り難い。トラバサミにかかったままの小沢でいてほしいのだ。小沢問題がまだ熱い争点である内に選挙をしたいに決まっている。景気対策の補正予算が成立した今国会中しか、そのチャンスはないだろう。延ばせば延ばすほど、今度は政権側にぼろが出てくる。「天の時、地の利」はそう頻繁には生まれない。
  
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