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2009-06-11 17:50

(連載)ASEANへはニーズに合った支援を(1)

小泉 秀人  学生
 日本は現在、ASEAN無しではやっていけない。ASEANに属する多くの国が、日本の貿易相手国であり、企業の投資先であり、そしてそれらの国が貿易輸送に欠かせない場所を占めているからだ。このため、日本はこれまでASEAN諸国に相当な額の、ODAを中心とした経済的援助を行ってきた。しかし今、昨今の経済・金融危機の下では、このようなASEANへの援助方法を変えるべきだと感じる。

 今回の100年に1度と言われる不況は、アジア諸国にも大打撃を与えた。金融市場における被害が比較的小さいにも関わらず、貿易依存度が高いこともあって実体経済へのダメージが大きかったのだ。被害が波及する中で、麻生総理は5月21日、国際交流会議「アジアの未来」において、ASEAN各国に向けて「各国が、内需拡大に、足並みを揃えることが、今、極めて大切であります」と述べた。外需が冷え込む国にとって、不況打開の策は内需拡大が鍵になってくる。そしてまた、ASEANにおける内需の高まりと経済成長は、日本における外需と雇用の増大に深く関わってくる。故に、日本にとって東アジアの国々が内需拡大に向けた政策を打ち出すことが重要になってくるのだ。

 しかし、各国の動きは鈍い。中国の大々的な景気対策を除くと、他のASEAN各国の景気回復に向けた内需拡大の政策は十分なものとは思えない。中国が大規模なインフラ整備や次の世代を見据えた産業支援など、長期的な経済成長を狙った政策をとっているのに対し、例えばインドネシアやベトナムでは税制面での景気対策にとどまっている。これでは、昨今の不況の波を早く越えるための大規模な内需拡大と経済成長は期待できない。

 こうした事態を踏まえて、日本はこれらの国に対する援助を惜しむべきではない。それは、自国の経済成長とASEANでの存在感の向上、ひいてはアジアそして世界全体の景気回復につながるからである。麻生総理は、先ほど述べた「アジアの未来」において、以下の(1)~(4)のような対アジア援助策を述べた。(1)ODAを最大200億ドル相当、(2)インフラ整備のための貿易保険枠を200億ドル相当、 (3)JBICの環境投資支援イニシアティブを2年間で50億ドル相当、(4)貿易信用の補完のために追加的な貿易金融支援を2年間で220億ドル相当である。しかし、これらの援助の中で、(2)と(4)は非常に効果的であるように思うが、(1)は旧来のODAに重点をおいた支援であり、各国のニーズに合った援助とは言い難く、望ましくないと思う。(つづく)
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