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2009-06-18 07:46

本当に「鳩山ポピュリズム」でよいのか

杉浦正章  政治評論家
 録画して克明に観察したが、党首討論は「鳩山ポピュリズム」対「麻生現実論」の戦いであった。民主党代表・鳩山由紀夫の発言は支持率上昇を盾に、テレビの向こうの視聴者だけをひたすら意識し、感情論・情緒論に走った。第1回の時と比べて、首相・麻生太郎は準備不足が目立ち、精彩を欠いた。しかし、肝心の財源論にしても、政権担当者としては麻生が現実的であり、鳩山は非現実的な空想論に終始した。目くらましで、素人には一見鳩山がリードしたように見えるかも知れないが、逆にこの「鳩山ポピュリズム」に政権を委ねて大丈夫か、という思いが募るばかりであった。

 とにかく、鳩山の“茶の間意識”が目立った。ワンセンテンスごとと言っても良いほど、「国民」のフレーズが繰り返された。「国民から見れば」「・・と国民から見られる」「国民生活第1」といった具合だ。最後には麻生が突然安保問題に話を移すしたのをとらえて、「聞いている国民の皆さんも唖然としただろう」と切り返すといった具合だ。聞いている「国民」としては、国の命運を左右する安保問題で民主党の主張を聞きたいところであったが、時間切れで残念に思った。

 全てを象徴したやりとりは、財源問題。医者不足で、「人の命が大事。医学部定員5割増」を唱える鳩山に対して、麻生が「財源がなければ無責任となる」と答えた。これに対して、「人の命より財源の方が大事か」と鳩山が切り返した点である。この情緒的、感情的な目くらましが、いまは茶の間の大衆に「もっともだ」と響くことを意識した発言である。明らかに、財源論を逃げながら、攻勢に出たように見せたのだ。自民党幹事長細田博之が「情緒に訴える姿勢は、政治家としてはずるいやり方だ」と分析したのは当然だ。鳩山の主張は「一般・特別会計を合わせた210兆円から無駄を削って財源を捻出(ねんしゅつ)する」というものだが、麻生の「210兆円のうち、国債費など削減が困難な費目は、計180兆円に上る。残り30兆円から10兆円を出すとの主張は非現実的」との指摘がどう見ても正しい。消費税も「4年間上げない」と明言したが、本当にこの国の財政はそれで行き詰まらないのか。景気が回復しても引き上げないのか。まず信用できない。

 総じて民放テレビの傾向に鳩山はピタリと呼吸を合わせている姿勢だ。鳩山は弟邦夫の辞任問題について「間違った方のクビを切った。総理の器としていかがなものかと」主張し、「政権を獲得したときには、西川社長に辞めて貰う」と明言した。しかし、鳩山は全国紙の社説を読んだかと言いたい。西川続投問題は日経、朝日、産経が続投論である。党首討論はひたすら敵失とポピュリズムだけで支持率を上げてきた民主党の政治路線を象徴する危うさがあった。その象徴としての鳩山が「総理の器」として正しいのか、「国民」はだまされていないのか、という疑問だけが残った。
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