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2009-07-27 11:11

TVニュース番組はこのままでよいのか

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 うんざりするようなドタバタ騒ぎの末に、自民党両院議員懇談会(!)開催とともに、衆議院解散とは相成った。その経緯に就いても感想なきにしもあらずだが、余りにも次元が低いことから、ここにコメントは差し控える。それよりも、いかがなことに相成るか、と興味半分で懇談会なるもののTV報道のスイッチを入れてみたのだが、これがまた唖然とする内容である。

 まず第一に、無数のチャンネルを誇るNHKが一つとして模様をまともに中継していない。優雅に音楽番組を流したり、常に変らぬナントカ講座を漫然と放映している。特定政党の集会に注力することは公共放送として適当ではない、という理屈でもあるのだろうか。断片的な映像のつぎはぎで、首相所信表明の後のやり取り(これが一番面白い筈だった)などはほとんど取り上げられていない。民放はどうかというと、これも輪をかけてひどい。したり顔のコメンテーターやらアンカーマン(パーソンと言うべきかもしれないが)のご意見、ご批判を中心とした、といってよいほどの構成で、ナマの報道とは縁遠い。ご意見、ご高説はプリント・メディアでも十分に承ることが出来る。本来のTV報道の真価は同時性であり、臨場感である、という報道のイロハをどこかにやってしまったとしか思われない内容だ。

 最近のTVには、とかくこのテの解説者がしゃしゃり出てくる体のものが多すぎる。野球中継などはその典型で、愚にもつかない「解説」と称する饒舌が過多で、本当の意味での技術的解説など滅多にお目にかからない。ノー・スリーになった後で、「ここでフォアボールだけは出したくないですよね」なんてのたまわって、あれでギャラを取っているのなら、羨ましい限りだ。それはともかく、アンカーマンを中心にしたニュース番組というのは、あれはいつ頃から始まったのか。米国における‘60年代のクロンカイトを皮切りに輩出したダン・ラザーやジェニングスのスタイルを踏襲した、というより物まねで始まったことは間違いない。それが視聴者受けが良かったせいかどうか、芸能人やタレントまがいの「コメンテーター」がすっかりのさばるようになってきている。

 視聴率が全てであってみれば(ちなみにこれは、一連の日本のニュース報道番組と、クロンカイトのそれとが似て非なるものだ、という一例だが)、タレントさんも良かろうし、ヒョーロン家も結構だ。しかし、受け狙いのおちゃらけや根拠に乏しい断言、さらには是々非々に名を借りた陳腐きわまりない結論の押し付けが、スタイルとして定着するのは好ましいことではない。特にTVというメディアの特性が先に述べたところに存することを心得ていれば、受け狙いの過激発言よりは、専門知識に裏付けられた冷静で抑制の利いた「解説」こそが、デマゴギーから民主主義を守る最大の武器であることをいま少し心得るべきではないか。
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