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2009-07-31 15:05

知られざる皇室外交の効果

湯下 博之  杏林大学客員教授
 6月中旬に常陸宮同妃両殿下が南米のペルーとボリビアを公式訪問され、日本と両国との友好親善関係の増進に大きな貢献をされた。私は、随員としてお伴をし、種々感じることがあったので、その一部をご参考に供したい。ご訪問は、これら両国への日本人移住110周年に際して、日本と友好協力関係の一層の増進を願うペルーのガルシア大統領及びボリビアのモラレス大統領からの招待に応じられたものであった。

 ペルーでの日本人移住者及びその子孫の活躍については日本でも知られているが、ボリビアにおいても、数々の苦労の末今や立派に定着し、サンファン移住地はコメの全国生産の1割、鶏卵については実に3割を生産し、毎年「全国コメの日」が同地で開催され、また、オキナワ移住地では毎年「全国麦の日」が同地で開催されているという。両国での日本人移住110周年記念式典では、両殿下のご臨席及び移住者への暖かいご対応と日本とそれぞれの国との関係増進へのお気持が強い感銘を与えたが、更にペルー、ボリビア両国が日本人の勤勉さ等を高く評価し、日本との友好協力関係の増進を熱望していることが実感された。

 特に圧巻は、両国大統領の両殿下に対する歓待ぶりであった。ペルーでは、ガルシア大統領夫妻主催の晩餐会が大統領官邸で開催されたが、それは国賓を迎えるかの如き盛大なものであった。ボリビアにおいては、ご訪問地が首都のリマではなく、日本人移住地に近いサンタクルスであったが、モラレス大統領以下三権の長や外交団までが航空機で1時間かけて、リマからサンタクルスを訪れて、大統領主催晩餐会が開かれた。晩餐会ではオーケストラも演奏されたが、出席していた或るヨーロッパの大使は「今の大統領の下で、外国要人を迎える晩餐会でこんなに盛大なのは初めてだ」と述べていた。そして、晩餐会の様子は、大統領の歓迎の挨拶と常陸宮殿下のお言葉を含め、30分以上にわたりテレビで中継された。

 ペルー、ボリビア両国におけるこのような大歓迎は、日本人移住者及びその子孫の活躍に対する評価もさることながら、日本との関係、特に日本政府からODAや日本企業の投資を中心とする協力への評価と期待、更には勤勉さその他の日本人の長所に対する評価の大きさ等を示すものと思われるが、更に賓客が皇族であったことが大きいと感じられた。今回に限ったことではないが、皇族の外国訪問は、友好親善関係、親近感や相互理解の増進の面では、どんな政治家の訪問でも得られないような効果がある。日本人は、そのことをもっと意識して、上手に活用すべきものと思う。そのためにも、皇族の外国公式訪問などは、その様子が日本国民によく知られることが第一歩であり、この点はメディアもよく考えていただきたい。
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