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2009-08-20 07:46

テレポリティクスでも完敗の自民党

杉浦正章  政治評論家
 「幹事長特別補佐」まで作って、自民党がテレビ対策に懸命だが、どうもぱっとしない。メディア対策、特にテレポリティクス対策は、現代の選挙にとって政党の死命を制する問題だが、攻めの民主党に比べて自民党は防戦にかかりっきりの印象だ。結局事実上の任期満了選挙で、追い込まれ解散を余儀なくされた受け身の選挙戦の結果が、現れているのだ。今朝の朝日新聞が他紙に先駆けて「民主300議席」と報じているが、宜(うべ)なるかなである。3人の「幹事長特別補佐」はいずれも参院議員の厚労相・舛添要一、経済財政担当相・林芳正、外相・中曽根弘文の3閣僚。枡添は国民的人気はそこそこあるが、衆院選比例代表東京ブロック1位での立候補を打診されて、辞退したことが物語るように、いまひとつやる気が見えない。林は最近の自民党でも珍しい論客だが、迫力がない。中曽根に至ってはボーとしていて、存在感自体がない。父親のイメージが強すぎるのだ。

 要するに「幹事長特別補佐」を作ること自体が、既存の自民党首脳のふがいなさを象徴しているわけである。逆に民主党は、今や出来もしない「ばらまき」の財源捻出(ねんしゅつ)を言っても、拍手で迎えられている。鳩山由紀夫や岡田克也のカリスマぶりに全面依存で事足りている。これだけで自民党完敗である。それでは、テレポリティクスの中核である朝の民放ニュース番組の動向はどうか。総じて言うならば、選挙を控えてさすがに放送法を意識してか、TBSを除いてはバランスがとれ始めている。また資本提携関係にある新聞社の論調の影響を強く受ける傾向にある。まず日本テレビが極めて中立性を維持している。「ズームイン・スーパー」のキャスター橋本五郎、辛抱次郎らは言論人の矜持を持っている感じだ。反自民的な傾向の強かったテレビ朝日の「やじうまプラス」も、なぜかここに来て中立性を保つように努力しているように見える。椿事件で放送免許停止寸前までいった歴史もあり、おそらく発言注意の指示が出ているのだろう。

 しかしTBSの「みのもんたの朝ズバッ」は、みのもんた自身といい、コメンテーターといい、“在野精神”が旺盛だ。ここ一年口を開く度にみのもんたが「12兆6千億の無駄遣い」と言い続けてきたことが、いかに民主党の“財源論”にプラスになってきたことか。PR費用に換算してみれば数十億円の価値があるだろう。コメンテーターも“反自民”的な発言が多い。民主党の財源問題について、日大教授の高木美也子は13日「それって、今まで借金してきた自民党が、こんなこと言えるの。自分の責任棚に上げて」と斬り込んでいるが、筆者にいわせれば「それって、朝日新聞の7月28日の社説と編集委員の発言の受け売り?」と指摘できる浅薄さだ。ジャーナリスト嶌信彦もやはり財源問題について、「政権が変わるってことはねえ、いままでと違ったことをやるということで、個性があっていい」と民主党びいきの、しかもおおざっぱすぎるコメントだ。

 結局、テレポリティクスにおいても自民党は負けていることになるが、原因はどこにあるのか。小泉の郵政選挙と比較すれば分かりやすい。郵政選挙はまさに小泉自身のカリスマ性と「郵政改革に賛成か、反対か」のワンフレーズ・ポリティクスの勝利であった。逆に今回は、民主党が「政権交代」のワンフレーズ・ポリティクスで勝負になっているのである。米国の場合、テレポリティクスも重要だが、「ウエブ・ポリティクス」も国民の関心が高い。大統領選挙でも、高名なブロガーたちが「オバマの嘘」「ヒラリーの嘘」を書き連ねて大変なページビューとなって参考にされている。あるブロガーにいたっては、1995年に遡ってオバマの嘘のファイルを作って、「オバマの嘘の歴史」を公表している。むしろテレビのコメンテーターの発言より、ブロガーの発言の方が信用されている傾向がある。「誰々がウエブにこう書いている」が選挙の話題となるのだ。日本はその意味でまったく遅れている。問題は、ろくでもない政治ブロガーしかいないことにあるのだろう。政治ブロガーがもっと育てば、テレポリティクスに対峙できる時代になるのだが。 
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