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2009-09-03 10:28

(連載)自民党に明日はあるのか(1)

水野 勝康  特定社会保険労務士
 中国語に「変天」という言葉がある。字のとおり、「天下がひっくり返る」という意味である。2000年の台湾総統選挙では民主進歩党の陳水扁前台北市長(当時)が宋楚瑜前台湾省長と連戦副総統(当時)を抑えて当選し、中国国民党一党支配に終止符が打たれた。政権交代が実現したのである。このとき、台湾のマスコミは「変天」という言葉を使って、政権交代を表現したそうである。このとき野党に転落した国民党は、その後2008年の総統選挙で馬英九前台北市長を当選させ、政権に復帰している。

 2009年8月30日午後8時、投票箱が閉まるのと同時に、一斉に獲得議席予想の速報が流れ、愛知県では早々と全15選挙区全てを民主党が押さえたことが報じられた。愛知県では自民党は小選挙区で全滅し、比例復活で辛うじて1議席を獲得するにとどまった。自民党にとっては未曾有の敗北である。結党以来半世紀以上第一党であったのが、ついにその座を明け渡すことになった。2005年9月11日の郵政選挙で自民党は愛知県で比例復活も含めて14選挙区で当選者を出していたのだから、愛知県は民主党の大躍進と自民党の凋落ぶりを象徴する県と言える。それはともかく、民主党308、自民党119、公明党21、共産党9、社民党7、みんなの党5、国民新党3、新党日本1、その他7となり、民主党は小選挙区制導入以降過去最高の議席占有率で与党の座に就くことになった。

 現在の民主党ができたのは1998年のことで、「政権交代」を掲げて勢力を伸ばし、創設から僅か11年で政権与党の座を手に入れた。この間、2005年の郵政解散では大敗したものの、それ以外はほぼ一貫して得票数・議席数を伸ばしてきた。一方の自民党は、郵政選挙では民主党を上回ったものの、国政・地方政界ともに退潮が著しい。今回の総選挙でも多くのベテラン議員が議席を失ったが、都道府県議会議員選挙でも、自民党の長老議員が選挙直前に立候補表明した民主党の若い新人に敗れる風景は珍しいものではなくなっている。市区町村議会では自民党系無所属が多数を占めているところが多いが、それでも2007年の統一地方選挙では民主党系候補者が数を増やした。かつては労働組合出身者が多かったようだが、現在では国会議員の秘書から地方議会へ進出する者が増えている。

 民主党は今回の総選挙で308議席を獲得したが、衆議院ではこれでほぼ伸びきったと言える。また、小選挙区の候補者は中国地方と四国地方を除くと、何らかのかたちで議席を獲得している。つまり、政治家志望の若者の受け皿となってきた民主党も、もはや小選挙区で新人が立てる余地はほとんどなくなったということである。今後、民主党の若手は地方議会へ進出していくことになるのではないか。地方議会議員選挙は国政選挙と比べ、地縁・血縁がものを言う世界である。その点で、ムラ社会に支えられた地方議会での自民党の層は厚い。としても、やはり転勤族の増加や原住民の転出・高齢化などで地縁・血縁は薄れつつあり、自民党の基盤とていつまでも安泰であるとは到底言えない。旧態依然としたムラ社会は、今後縮小していくことはあっても拡大することはないからだ。この点で、地縁・血縁に支えられ、ムラ社会の視点しかない自民党議員の場合、遠からず限界が来る。現状打破を求める住民が多いのも事実であり、民主党の若手が地方議会に食い込んでいける余地はまだまだあるように思われる。こうした点で、民主党の前途はそれなりに明るいと言える。(つづく)
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