国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-09-16 09:55

(連載)米国の対ミャンマー政策は変化へ向かう(2)

田島 高志  元駐ミャンマー、カナダ大使
 ウェッブ米上院議員の言葉はつづく。「米国が制裁を解除するとしても、それは米国の経済的利益のためとか、米国が軍事政権を民主政治に向かわせるよう長年採ってきた政策が負けて、降伏したものだ、と受け取られてはならない。他方、このまま腕組みをしながら自慢して、ミャンマーを助けるために何かやっているのだ、と装うのも間違いである。では何をすべきか。第1に、来年の選挙にはNLD(国民民主連盟)も長期的政治戦略的観点から参加するよう促し、米国も選挙の実施に援助を与えることだ。第2に、米国は非民主的国家に対する政策に明確な基準を設けるべきだ。これまでの政策は、相手国により異なる情況次第というものであった」。

 「中国に対して、米国は20年以上も対話を拒否し、外交関係もなかった。中国は総選挙を行ったこともない。しかし、いまや米中両国は経済的にも戦略的にも固く結びついている。ベトナムに対して、米国は選挙への監視団派遣の提案もせずに、関係を進めた。ベトナムの開放化を実現させた最大の要因は、1994年の米国の対越貿易解禁であった。第3に、米国は中国に対して、ミャンマー情勢への沈黙を止め、世界の大国になる国の役割として責任ある行動をとるよう求めるべきだ。それは、軍事政権に決まりきった非難を繰り返すよりも、はるかに幅広い世界の支持を得ることが出来よう」。

 「第4に、米国の制裁緩和は、慎重に、しかし直ちに開始し、もしそれに対してミャンマー側から前向きの反応があれば、さらに前進するために、人道援助を初めいくつかのことができる。第二次大戦中のミャンマー北部米機墜落現場での米兵遺体捜索に協力を求めることもできるかも知れない。われわれの究極の目的は、ミャンマーが世界の責任あるメンバーとなるよう激励し、国民の孤立を終らせ、開かれた政治体制の下で経済的に繁栄した生活を送ることができるようにすることだ」。

 このようなウエッブ上院議員の提言が、米国政府により直ちに具体化されるかは、さらに注目の要があるが、過去の例に見るように、米国の政策転換は情況によっては非常に速い。ミャンマー側も米国の動きを注目しているであろう。日本政府は、この機会に日本側の見解を米国に対し明確に伝え、ミャンマー側にもこれまで以上の働きかけを行い、米国と協力しつつ、ミャンマー開放化政策をさらに前進させるべきであろう。ミャンマーの民主化は、一歩一歩進める以外に道はなく、制裁は国民を苦しめ、民主化を遅らせているだけなのである。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム