国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-10-27 19:35

(連載)国際化されるインターネット・ガバナンス(1)

内海 善雄  前国際電気通信連合事務総局長
 9月末に、ほとんど誰からも注目をされなかったニュースが一部の新聞等に小さく報じられた。「ICANN、米政府から独立で合意」というものである。実は、これは21世紀の情報社会の根幹にかかわる重大な出来事だ。

 今から5年前、2005年12月スペインのビブラオにおいて、ある南米の国の若い大統領夫人と私は次のような会話をした。彼女は、情報化に極めて熱心な人で、ニューヨークで開かれた国連の会議などでお会いしていて、顔見知りであった。

 「ウツミさん、これからチュニスの情報社会サミットに大統領の代理で出席します。ところで、インターネット・ガバナンスが問題だと説明を受けたが、説明を聞いてもさっぱりわかりません」

 「インターネットは、各国別に構築されている電話と異なり、全ての通信が、アメリカのセンターにあるアドレス情報で管理されています。したがって、奥様のメールも、アメリカがそのセンターの情報をつつくと、いつでもストップすることができるのです。本当かどうかわかりませんが、イラクで戦争が始まった時、一部の通信が途絶えたということが噂されています。また、そのアドレス情報の登録事務がビジネスになっており、ICANNという組織の独占になっていて、ユーザーは、独占料金を払わされているのです。このような、アメリカが独占しているインターネットの管理を、もう少し民主的に、また国際的に管理すべきだということが、インターネット・ガバナンスの問題です」

 「なるほど、貴方の説明はわかりやすい。それでは、アメリカは、どうするのですか?」

 「インターネットは、情報社会で、力の源泉ですから、アメリカが手放すはずがありません」

 「それでは、いくらサミットで議論しても、解決しないではありませんか?」

 「難しいでしょう。しかし、皆が、この問題を理解することは大きなことだと思います。現在のインターネットに対抗するようなネットワークが出現し、ビジネスを維持するためにアメリカも譲歩せざるを得ないという市場メカニズムが働かない限りは、解決方法はないと思います」

 「アメリカは、ネットワークが分裂したら、お互いに通信できなくなるから、現状のICANNによる一元的な管理が必要と言っていますよ」

 「現在電話は世界中に通じますが、これは、各国別のネットワークがITUの下で合意されたルールに従って接続されてつながっているのです。インターネットも同じように、各国別のネットワークになって、それがつながって全体のネットワークになることも可能なのです。そうすれば独占料金を払う必要もなくなります」

 「本当によくわかった。ありがとう。でも、我が国では、誰もこんな話をしてくれなかった」

 「専門家は、皆、正確に説明しょうとするから、難しくなると思います。私の説明は、正確ではないですが、事の本質は間違ってないと思います」(つづく)





 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム