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2009-11-05 08:06

秘書逮捕が鳩山首相進退のカギ

杉浦正章  政治評論家
 かって他の政治家に投げたブーメランが、一周して自分の頭に当たった形だ。仏教用語で言えば、因果の小車が巡りめぐって首相・鳩山由紀夫に回ってきたのだろう。鳩山はまず外れることのないトラバサミにかかった。献金疑惑をつぶさに検証すれば、「故人献金」は虚偽記載で明確な政治資金規正法違反で逃れようがない。しかし、これは秘書のせいに出来る。問題は「量的規制」違反の疑惑が出て来て、これに鳩山がかかわっているかどうかが焦点となる。予算委員会答弁を聞く限りにおいては、関与の気配が濃厚だ。他人の政治資金違反に対する首相の過去の発言は実に容赦無いものであった。「言うまでもなく、秘書の罪は国会議員の罪である。ことに金庫番秘書ならなおさらである」は、自民党元幹事長・加藤紘一の秘書による脱税容疑についての発言。「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです」は、元衆院議長・土井たか子の秘書による秘書給与流用事件についての発言。

 鳩山の苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)は手心を加えなかった。秘書が逮捕されようものなら「議員の分身といわれている会計責任者の逮捕は、 議員本人の責任であり、改めて辞任を強く求める」(衆院議員・鈴木宗男の秘書逮捕の際)と言った具合だ。あらゆる秘書の不祥事を政治家の進退に結びつけてきたし、当該政治家たちは結局責任をとった。鳩山は、これら過去に自分が追及した政治家と大同小異の立場に陥った形だ。この窮地から鳩山は逃れることができるだろうか。これまでいわれてきた虚偽記載は、秘書のせいにすれば逃れられるし、その方向に進めるのが基本的な作戦だろう。しかし自民党で弁護士の芝山昌彦の委員会での追及・答弁を分析すると、むしろ政治資金規正法における寄付の量的制限違反にスポットを当てているような気がする。同規正法は3つの側面から政治資金の流れを制限している。(1)寄附者と寄附の対象者の制限、(2)寄附の量的制限、(3)寄附の質的制限だ。

 このうち量的制限について芝山は、「1000万円を超える寄付は、政治家個人の資金管理団体でもできないと、罰則付きで定められている」と追及し、鳩山は、「1000万円を超えた部分は、私のお金を借りて運用し、後で返してもらうという判断が出来ていた」と答弁した。要するに貸し付けだと言うわけだ。貸し付けならば1000万円の制限に引っかからない、と言う判断だろう。しかしこの答弁には、破たんが見られる。まず長期にわたり返却の事実がないのではないかということ。加えて貸し付けであるとの記載が見あたらないのではないかということである。上限超過をごまかすために、秘書と打ち合わせて「故人献金」を作り出した可能性は否定できない。弁護士と綿密に打ち合わせたうえでの答弁だろうが、これを上手の手から水が漏れるという。この部分が証明されれば、本人直撃となりうる。また母親など親族からのカネについても「私の知る範囲では、そのようなものは無いと信ずるが、地検の捜査で全容が解明されると信じている」と全面否定せずに、あいまいさを残した。これは脱税につながりうる問題をはらんでいる。

 今後事件捜査の過程が進展してゆく中で、鳩山は、はまったトラバサミから逃れることが出来るだろうか。地検は早晩秘書の逮捕に踏み切るだろう。虚偽記載は秘書自身も認めており、立件は免れない。鳩山の論法を借りれば、「秘書の罪は国会議員の罪」であり、まず確実視される秘書逮捕の時にどう政治判断をするかだ。自民党など野党は参院選挙に向けての絶好の材料として、あらゆる国会戦術を駆使して辞任に追い込もうとするだろう。この秘書逮捕の大波を乗り越えれば、事件は裁判に移るから政治的には当分うやむやに出来る。野党にとっては秘書逮捕を進退に直結できるかどうかがカギだ。
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