国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-11-15 11:46

サウジ戦闘機のイェーメン領域攻撃

茂田 宏  元在イスラエル大使
 11月6日付ロスアンジェルス・タイムズ紙は、「サウジ戦闘機、イェーメンの叛徒を攻撃」との見出しの記事を掲げ、つぎのように報じている。

 サウジの軍用機が北イェーメンのシーア派叛徒根拠地を11月5日空爆した。サウジ軍は、イェーメンとその山岳で6か所の叛徒の拠点を攻撃し、軍が叛徒勢力による越境攻撃を防止するために侵攻している。サウジの政府顧問は「いくつかの空爆、かなりの砲撃が、国境地帯だけではなく、北部の都市サーダの叛徒根拠地に加えられた」とロイターに述べた。イェーメン政府は何の声明も出さず、アルジャジーラに「サウジはイェーメン内の目標を攻撃していない」と述べた。イェーメンはアルカイダ員を惹きつけており、サウジはイェーメンの不安定を利用して、アルカイダがサウジに侵入し、政府機関や石油施設を攻撃することを恐れている。少なくとも40名の叛徒がサウジの空爆で死んだとされている。その前に叛徒がサウジに越境攻撃をかけ、ジェベル・ドゥカン近くで治安部隊員1名を殺害、11名を負傷させた。イェーメン北部には政府の統治が及んでいない。8月にイェーメン政府は叛徒に対し「焦土作戦」を始めた。数万の避難民が出たが、政府は報道管制をしている。叛徒グループはシーア派で、イランの支援を得ているとされる。

 このサウジの行動がサウジとイェーメンの両国家の対決になる可能性は今のところ小さい。双方で共同で対テロ対策をしている形になるのが理想である。アルカイダがソマリアとイェーメンでの活動を強化している。両国とも、正式な政府はテロに反対であるが、その領域内には、アルカイダに同情的な勢力、すなわちソマリアでのアル・シャバーブとイェーメンでのホウチ(またはフーシーと発音)叛徒グループ、が支配するかなり大きな地域がある。両国とも破綻国家と言ってよい。米国内では、対米テロ脅威としては、ソマリア、イェーメンはアフガンと同じような脅威であるとの議論がある。この議論は正しいが、米国としてソマリアやイェーメンの状況にアフガン並みの対処をする余裕はないだろう。

 アフガンとソマリア・イェーメンの間に違いはあるのか。シンボリックな意味の違いがあると思われる。アフガンでは、既に米国やNATOなどが戦争をしている。そこからの撤退は米国などにとって「敗北」になり、イスラム過激派を元気づける。ソマリア・イェーメンにはそういう状況はない。アメリカの自衛権行使であったアフガン戦争が、テロ対策から国造りにまでなっていった過程は、諸事情に流された面も否定できない。その時々の事情に対応していて、そういうことになった。物事を行う際は、当初の目的を常に念頭に置き、その修正は最小限にとどめることが、成功につながるように思われる。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム