国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-11-26 09:48

「イスラム原理主義は=過激派」ではない

石川 純一  フリージャーナリスト
 1989年のベルリンの壁崩壊で、第1次大戦後その特徴を明確化したファシズム、共産主義、民主・自由主義の3つのイデオロギーの戦いに終止符が打たれたことは、前回述べた。「20世紀型紛争」に代わり、米国の主導する「テロとの戦い」に象徴される「21世紀型紛争」が、遙かな地平からむくむくと頭をもたげ始めた。ベルリンの壁崩壊に先立つこと10年のイラン革命(1979年)がその端緒である。

 イスラム原理主義を「一部のイスラム信者の唱える戯言」と切って捨てる見方がある。中国、要するに中華人民共和国を筆頭とする中国圏への対処の方がよほど大事だという考え方だ。しかし、これは偏狭な考え方だと筆者は思う。世界3大宗教の1つの中に根ざしてるイスラム原理主義に対しては、それ相応の敬意を払って応ずべきである。少なくとも、それは犯罪者の温床と同列というわけにはいかない。国連などのデータに基づいたバチカンの最新統計年鑑によると、2006年度の世界のイスラム教徒人口がカトリック教徒人口を抜いた。バチカンの機関紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」が2008年3月30日に報じた。

 発表された統計によると、06年の世界人口65億人のうち、イスラム教徒は19%以上。対するカトリック教徒は17.4%を占めた。ただしカトリック、ギリシャ正教なと東方教会、英国教会、プロテスタントなども含めたキリスト教全体で見ると、キリスト教徒は「世界人口の3人に1人」という割合になり、イスラム教徒の人口を上回る。イスラム圏とは、イスラム教とそれを信仰・実践する人々であるムスリム(イスラム教徒)が社会の中心に立って活動する地域を指し、イスラム法(シャリア)の用語に言うダール・アッサラーム(「イスラムの家」)とほぼ等しい概念を意味する語である。

 イスラム圏の中には、法としてシャリアを用いない国も少なくない。トルコやアルバニアなどイスラム教徒が大多数を占める国であっても、世俗主義を標榜し、シャリアを用いてはいない。問題は、イスラム原理主義が、国際テロ組織アルカイダに象徴されるイスラム過激派と同列視されることだ。実際には、一般にイスラム原理主義として評価されることの多いワッハーブ主義を国是とするサウジが、穏健派の親米アラブ国家の代表格であるように、現実の政治の場では「イスラム原理主義=過激派」と単純にとらえることはできない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム