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2009-12-01 20:10

環境税をめぐる議論について

鈴木 馨祐  前衆議院議員
 民主党政権になってから環境税をめぐる議論が盛んである。環境税制、グリーン税制に政治家となってより取り組み続けてきた者として、私も税のグリーン化の方向性は歓迎したい。しかし、今言われているように、もし揮発油税等の暫定税率を環境税に置き換えるということであれば、それには異議を申し立てざるを得ない。それはグリーン化にある意味で逆行することを意味するからである。

 今の日本において温室効果ガスの削減、省エネ化が十分に進んでいないのは、主に輸送部門と民生部門である。逆に言えばこうした分野の省エネ化の促進こそが、これからの環境政策が目指すべき方向である。その一つの手法として、このような税制を活用したインセンティブの導入があるわけである。その文脈で暫定税率を廃止して、環境税に転換するとは、どういう意味を持つのか。もちろん環境税の設計がどのようになるか次第であるのだが、少なくとも次のようなことはいえよう。

 暫定税率は、輸送部門、クルマの利用において、より省エネ化を進めるための有効な政策であった。なるべく無駄なクルマ利用はやめる、なるべく燃費のいいクルマを購入する、エコドライブを心がける、そうした効果があった。然るに一般環境税ともなれば、産業、輸送、民生すべての分野への課税である。すべてに課税するのであれば、インセンティブづけは難しい。しかも単に代替するだけで、税の規模が変わらないのであれば、ことクルマに関しては、逆に事実上の減税となってしまう。もちろん、消費税よりは環境税のほうが環境へのプラスの影響をもたらすであろうし、環境技術促進の観点から行けば、消費税よりも経済へのマイナスも少ないから、その意味で環境税は優れた税制である。

 しかし、温室効果ガスの削減が最も進んでいない分野の一つであるクルマに特化し、ドライバーにエコを意識させてきた暫定税率を廃止することのデメリットを考えれば、それをやめて環境税に転換するということは、政策目的も明確ではなく、極めてビジョンの無い税制としか評価しようが無い。選挙用の業界対策としては、意味があるのかもしれないが、税制という経済、環境など様々な観点から極めて重要なツールを選挙対策のために浪費してしまうといった政治は、結果的に国民一人ひとりにツケを払わせることとなる。そのような愚を民主党政権が冒さないことを心より祈りたいと思う。まずはどのような戦略で環境税を導入するのか、何に代替する税制とするのか、そうしたストーリー、ビジョンが明示されるべきであろう。
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