国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-12-02 19:48

民主党に吹く4つの逆風

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 民主党政権誕生から3ヶ月が過ぎた。その間のめざましい変化、あるいは改革の緒ともいうべき事態の素晴らしさに就いては、これまでにも述べたし、敢えて再説する要もないだろう。しかし、良いことづくめで終わる筈もないのが政治というもので、予見されるだけでも幾つかの逆風の可能性があるように思う。

 第1には、鳩山首相の政治献金問題だ。関連業者からたかってみたり、怪しげな性格を持ったオカネではないとはいいながら、年間数億の金額の移動が「知らない間に」起っているとは考えにくい。また、仮に知らなかったのが事実であったにせよ、しれっとそのまま首相の座に座り続けることが可能かどうか。小沢幹事長の「秘書」の違法行為は、清潔感と無縁の政治家であっただけに、ダメージが逆に少なかったのとはいささか趣を異にしよう。引き際と、後継者決定のプロセスを巡って、相当な逆風が吹く可能性はある。ということは、これを奇禍として順風化する可能性もある、ということだが。

 第2は、借金財政と累積赤字の増大の話だ。コンクリートから人間へという美名のもとであろうがなかろうが、この国の破産状況をより悪化させ、その上景気回復が思わしくない、ということになれば、移り気な国民の支持は急変しないでもない。連舫議員のかっこよさを以てしても、とても太刀打ちできまい。景気回復と号して国債の日銀引き受けでも敢行すれば、まさに自民党政権の引き写しだ。いかに御用学者を動員しても、この逆風は止めようがあるまい。経費カット、公共投資差し止めをドラスティックにする他はないし、その後の増税もやむを得まい。しかし、それらの思い切った施策は、いずれも景気を一層冷え込ませる、といいつのる「世論」にいかに立ち向かうか。手品師ではあるまいし、この逆風を順風に変えるのは至難事だと見る。

 第3の逆風は、本来水と油の国民新党、社民党との連合によって醸し出される可能性がある。もともと数合わせの野合だったものが、いささか分をわきまえることを忘れたパートナーたちによって、既に風波が立っている。これがその場しのぎの膏薬張りで収まらなくなる可能性は十分だし、そこがぎくしゃくすると、なんとか治まりをつけてきた民主党の労働組合依存体質と旧自民党体質との確執に引火するおそれは十分にあるというべきだろう。政党再編の可能性はともかく、誰が見ても、連合野党よりは、渡辺「みんなの党」や河野太郎氏によって代表される自民党革新派のほうが、民主党イメージとの共通性が高いという事情もあってみれば、この逆風は台風になることもあると考えてよいだろう。

 この3点は、極めて近い将来に吹くであろう逆風だから、民主党は待ったなしの臨戦態勢で立ち向かう必要がある。これと異なり、4つ目の、そしてこれはやや長期にわたる逆風は、自民党がダメ自民党のままで再生を果たせないことによって発生する可能性がある。敵失に乗じて漁夫ろうなどというさもしい根性で、自民党が代案策定、あるいは民心に訴える政策綱領策定を怠ったり、失敗したりすれば、民主党のさまざまな構造的問題点が不問に付されたままずるずるといってしまう危険性がある。これはより本質的であるだけに、日本にとって由々しい逆風になる。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム