国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-12-19 09:44

(連載)人口動態で見る日米関係の将来像(2)

若林 秀樹  元参議院議員
 人口動態は、押し寄せてくる「津波」のように、一度動き出したら避けることのできない予測であり、これが今後の日米関係に大きく影響することは必至である。日本は人類史上経験のない程の少子高齢化・人口減少時代に入り、21世紀半ばまでに人口は1億人(マイナス約25百万人、20%減)を切る。逆に米国は、先進国の中で唯一、人口が大幅に増加する国として、今の3億人から4億人になり(30%増)、インド、中国に続き世界で3番目に位置する若い人口大国として君臨し続ける。

 生産年齢人口は、2050年に日本はマイナス39%、米がプラス28%。人口中央値の年齢は、日本が56.2歳、米国は39.6歳と親子程の年齢差になるという、恐ろしい予測になっている(2007年国連調査)。米国が温暖化ガスの抑制に慎重なのは、この人口増が背景にある。人口増と経済的・政治的影響力は一定の相関関係があることを考えると、国際社会において、日本の存在感は益々薄くなり、米国は引き続き影響力のある国に留まることになる。

 日米関係でいえば、親子程の平均年齢の差は価値観の違いを生み、「保守的で頑固」になりがちな日本と、一見無謀とも思えることに対しても「挑戦意欲」、「改革志向」の強いアメリカとの関係になるかもしれない。もしそうだとすれば、体が大きく力の強い子供(米国)に対して、体の小さい老いた親(日本)の言うことを聞かせるには、親は子供から尊敬され、知恵を持った頼りがいのある存在にならないといけない。つまり、日本は米国や世界から一目も二目も置かれる「知恵と徳のある国」を目指すことで存在感を発揮しなければならない。

 そのような視点から国の進むべき方向性や外交戦略を組み立てる必要があると思う。来年にも日本の経済規模は、中国に追い抜かれ、世界第3位に転落し、さらに相対的な位置づけは下がり続ける。また日本は、核を持ったアメリカ、中国、ロシアという大国に囲まれるという、変えることのできない地政学的な運命を抱えている。そろそろ日本は、自らの将来像を冷静に見つめ、どんな国を目指すのか、新たな国力の源泉はどうするのか、国際社会の中でどうやって生きてゆくのか、地に足のついた中長期的な国家像を模索することが重要ではないだろうか。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム