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2010-01-06 07:43

「小沢圧力」に“とん走”の図:藤井辞任

杉浦 正章  政治評論家
 体調不良も全くないとは言えまいが、本筋は別にある。財務相・藤井裕久はガソリン税率維持で幹事長・小沢一郎との葛藤に破れ、嫌気がさしたのだ。さらに自らが中心となったマニフェスト路線の転換と矛盾露呈で、通常国会審議にとても耐えられないと直感したに違いない。辞任の本質は「疲れた」ことを理由に“とん走”をはかったに過ぎない。確かに予算委審議の大半を引き受けなければならない通常国会は、藤井にとっては悪夢以外の何物でもあるまい。首相・鳩山由紀夫がかってなくいら立っているが、無理もない。国会審議における最大の支柱を失って、野党の矛先は自分に向かうからだ。“小沢一極支配”の高笑いが聞こえる。

 すべての発端は12月16日に官邸に乗り込んだ小沢の「予算編成重点要望」にある。マニフェスト路線大転換を迫る小沢は、もっぱら藤井だけを直視しながら大演説をぶったと言われる。「全国民の要望だ」として、暫定税率継続と子供手当への所得制限をぶち上げた小沢は、これを推進してきた主役の藤井を、二階に上げて、はしごを外したことになる。そもそも藤井は小沢の忠臣と言われてきたが、昨年夏の西松疑惑をめぐる秘書逮捕で、小沢辞任論を漏らして、関係が極度に悪化した。財政など知らない鳩山が藤井を財務相に起用したいのを小沢が露骨にも難色を示して、組閣人事が進まなかった経緯がある。藤井は財務相就任早々に暫定税率廃止を打ち上げ、自らが作ったマニフェスト至上主義の中心でもあった。ところが機を見るに敏な小沢は、新聞論調が暫定税率維持に走ったのを見て、一大方向転換を成し遂げた。藤井は見事に置いてけぼりを食らったのだ。

 もともと筆者は、財政通とは言っても、民主党の財政通とはこの程度かとつねずね思っていた。財務相になってからも、最大のポイントであるマニフェストの財源問題について、「民間会社でも社長が替われば節約で1割はひねり出す」と7.1兆円を節約で賄うと言ってはばからなかった。しかし小沢の暫定税率維持で、財源がやはりなかったことが見事に露呈されてしまったのだ。円高容認発言をして円高・株価下落のきっかけを作り、先進国で日本の株価だけが低迷するという大失態を招いた。秋の臨時国会ではマニフェストの転換はまだ行われていなかったから、論戦は他に向かったが、通常国会の政策論争では、野党の総攻撃が藤井に向けられることは必至であった。誰がどう見ても「マニフェスト詐欺」(谷垣禎一)であり、自民党にとって見れば、予算委審議で藤井を攻めることほど楽なことはない。予算案自家撞着の中心人物だからだ。

 恐らく藤井は、これでは体力も気力も持たないと感じたに違いない。政治家が仕向ければ医者など何とでも言う。「三十六計逃げるにしかず」を選んだと見るのが妥当だろう。それにつけても小沢の執拗(しつよう)さは相当なものがある。幹事長辞任論を唱えた者には必ず仕返しをしている。野田佳彦のグループにいたっては完全に干されたし、渡部恒三も無役。そして藤井だ。小沢の小心さが結果的に党内に反論を許さない「小沢全体主義」につながっている。とばっちりを食らって迷惑なのは鳩山だ。支柱を失った打撃は計り知れない。野党の矛先は事実上鳩山一人に集中することになる。
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