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2010-01-08 10:19

普天間基地移設問題について想う

大河原 良雄  グローバル・フォーラム代表世話人
 暮れから新年にかけて年末年始の幾つかの会合で、知人・友人と挨拶を交わす機会があったが、一人の例外なく「日米関係は大丈夫だろうか」「このままでは折角築き上げてきた同盟関係にヒビが入って仕舞うのではないか」と、鳩山内閣の対米外交姿勢について強い憂慮の念を示していた。昨年8月ニューヨークタイムズが報じた鳩山由紀夫代表の日米関係に関する論文(雑誌『Voice』から転載)がかなり米国批判的なものであって以来、それを背景として鳩山新総理の日米関係に関する発言のブレに対して戸惑い、非難をする米側の記事及び社説が目立っていた。例えば普天間移設問題を繞って鳩山総理が名護移設に反対の立場を支持するかと思うと、米側のこだわる日米の合意支持をほのめかしたり、これまでの合意通り問題の早期解決を急ぎたい米側を苛立たせてきた。

 ワシントンが最近にない大雪に見舞われ公共機関が閉鎖された、暮れの12月12日に、藤崎一郎駐米大使がクリントン国務長官の呼び出しを受けて、「基本的には13年前の日米合意以外には受け入れ得ない」とする普天間基地問題についての米側の厳しい立場について、正しい理解を求められたと報じられたが、これはこれまでの鳩山内閣の対応に対する米側の苛立ちを具体的な措置で示したものであるとみられている。此の問題に関しては、橋本内閣がクリントン大統領との間で困難な交渉を経て合意されたものであるが、それ以後特段の進展もないままであった。鳩山内閣は、旧自民党内閣による対米合意をそのまま引き継ぐことはないとの姿勢の下に、県外又は国外への移設を主張する連立与党の社民党に同調するかのごとき態度を示したこともあった。このままでは連立の相手である社民党の主張に重きを置くか、同盟国としての米側の主張を容れるかという極めて深刻な、そして最も望ましくない選択を迫られることになる。

 米国との間に溝が出来た場合、本来最も重要な日米同盟の信頼関係に大きなヒビ割れの生ずるのを如何にするか、その修復は決して生易しいことではないことは明らかである。鳩山総理は11月13日東京のオバマ米大統領との首脳会談で「自分を信じて貰いたい」(Trust me)と呼びかけたと報じられたが、その後この言葉を裏付ける様な手当が行われているか否か明らかにしない。この関連で想起されるのは、1960年代終わりの日米繊維戦争である。当時沖縄返還交渉の最中であったが、1968年の大統領選挙で南部の繊維業界の票を是が非でも必要としていたニクソン大統領は佐藤栄作総理に繊維交渉の妥結の為に日本の繊維業界の譲歩の為の働きかけを求め、佐藤総理は「善処します」(通訳は「I do my best」と訳したと伝えられている)と応じた。然るに、佐藤総理は国内的に特段の措置を講ずることが出来ず、ニクソンの失望をかってしまった。日本側が蒙った1971年の所謂ニクソン・ショックの一つの理由は、佐藤総理の発言に対する不信であったといわれる。

 普天間基地問題に関し直接交渉の責に任ずる岡田外相と北沢防衛相の発言が、それぞれ鳩山総理と斉一でないのも気になる点の一つである。本年2010年には安全保障条約改定50周年を迎える。この節目にあたり日米同盟の深化という大きな命題に取り組むべく、日本外交の基軸たる日米同盟の信頼関係の確立の為に全力を傾けるべきである。
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