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2010-02-10 07:39

「枝野起用」、「石川離党」でじわり小沢離れ:鳩山

杉浦 正章  政治評論家
 「『よろしいか』『はい』というのが、精一杯」(朝日川柳)であった首相・鳩山由紀夫が、じわりと“小沢離れ”をし始めた。明らかにその発言からは、小沢秘書・石川知裕を離党させたい気持ちがありありとみられる。小沢批判の言動を繰り返す元政調会長・枝野幸男を行政刷新相に起用するのも、小沢にとっては“神経逆なで”以外の何物でもない。遅まきながら、「共倒れの構図」から離脱したいという思いの方が、「何でも小沢頼み」より勝りつつあるような感じだ。しかし小沢の“巻き返し”は陰に陽に出てくるから、まだ恐る恐るの小沢離れだろう。

 今回の鳩山発言を分析してみると、世論調査で散々な数字が出た翌日2月8日の朝からトーンが変わったのに気づく。衆院予算委で小沢について「自身の秘書が逮捕され、その責任を感じていると思う。当然、責任はあると思う」と述べている。なにより国民世論を気にする鳩山らしい“変化”と見る。その直後の小沢との会談の「ぜひ一生懸命頑張ってください」発言も、「よろしいか」「はい」に訂正している。石川の進退について9日の衆院予算委員会で「本人自身の身の処し方が十分でない、あるいは必ずしも国民の思いとは違うときに、党としての判断も当然でてくる」と述べている。これは民主党として最終的には除籍処分をすべきであるとの判断に傾いたものだろう。鳩山は、石川辞任否定発言について「地元に帰ればああいう思いになる」とも述べて、擁護の姿勢は全くない。

 今朝の朝刊の見出しも、読売、日経などが石川の会見をもとに「石川議員、辞職・離党せず」としているのに対し、朝日が「石川議員、離党見通し」、産経が「離党へ」と離党に踏み切っている。見通しを持って見出しを踏み込むかどうかの勝負所だったが、結局離党になる方向だろう。加えて枝野の起用だ。鳩山は一時枝野を首相補佐官に起用したかったようだが、裏で小沢の横やりが入り、ぐずぐず決めかねていた。これに業を煮やしたのか、枝野は公然と小沢批判に踏み切った。8日朝も「小沢氏自らあらゆることを公開し、国民の信頼を取り戻す必要がある。それができないなら、身を引くことも含めて、けじめを付けることが必要だ」と辞任を迫っている。朝日によると、鳩山は8日の小沢との会談で枝野起用の了承を取り付けたと言われる。枝野の“こわもて”が成功したことになる。

 鳩山の狙いは、政権に刷新ムードを取り入れたいということだろう。非主流議員も取り込んで、度量のあるところを示し、支持率回復に持ち込みたいということだ。しかし大きな政局の流れから見れば、「石川離党」も、「枝野起用」も、当面の糊塗策に過ぎない。石川の離党は当然の常識だし、一閣僚人事で支持率低下の潮目が変わることはないだろう。なぜなら、問われているのは紛れもなく鳩山自身と小沢の「政治とカネ」であるからだ。民主党政権は首相と幹事長を移植する大手術しか窮地を脱する道はあるまい。
 
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