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2010-03-01 07:30

小沢訪米は、キャンベルの“勇み足”か

杉浦 正章  政治評論家
 時には学者の発言にもニュース価値がある。2月28日のTBS時事放談における米コロンビア大教授・ジェラルド・カーティスの発言だ。カーチスは、明らかに国務省、国防総省高官らとの接触を通じた“重み”を背景に発言しているからだ。この中で、国務次官補・キャンベル(東アジア・太平洋担当)が民主党幹事長・小沢一郎訪米団を米国に招待した問題について、「なんでバカなことをしたのか。非常におかしい」と強い口調で批判すると共に、米政府内にもキャンベル批判が少なくないことを明らかにした。まさに“キャンベル勇み足”論だが、国務、国防両省の雰囲気を反映したものとして注目される。

 キャンベルの意図については、民主党とのパイプを太くするためとか、普天間移設問題を一挙に決着させるためとか、さまざまな解説がなされてきた。注目すべきは、21日付の日経の風見鶏「キャンベル氏の失策か」がいみじくも指摘しているように、「参院選の前には小沢氏が幹事長を辞める可能性も語られてきた。それを知らなかったのだろうか」に尽きる。いまや日本国民の70~80%が小沢辞任論であり、キャンベルはそれに助け船を出したのか、と疑われているのである。

 カーチスは司会者に「ぜひとも言いたいことがある」と前置きして、「キャンベルは中国に小沢さんが140人連れて行ったのを見て、鳩山政権を中国寄りと見た。それで、小沢さんをワシントンに呼ぶことを考えたのだろうが、大きな間違いだ」と指摘した。さらに「小沢さんは政府の人間ではない。党の幹事長であり、下院議長が呼ぶなら分かるが、米政府の代表が『オバマが会う』との印象を残して呼ぶのはいけない」と、筋が違うことを強調した。キャンベルの考え方の浅薄さに踏み込んだ指摘だ。加えて「オバマ政権内部で困ったものだと思っている人は少なくない」と政権内部で問題になっていることを明らかにした。小沢の側は、キャンベルの申し出を渡りに舟とばかりに飛びつき、「オバマとの会談」を訪米の条件に挙げた。要するに、中国で受けたのと同じように、“国賓並み”の接遇による「小沢認知」を米側に求めたのである。これに関してカーチスは、「行った場合には、オバマは絶対に会うべきではない」と強い口調で強調した。

 カーチスは具体的な“小沢拒絶”の理由については言及しなかったが、おそらくオバマが日本国民の感情を逆撫でするような会談をした場合、長期的に見て日米関係によい影響を与えないという見通しを持った上での発言だろう。まさに正義と邪悪を峻別する米国人らしい発言で、好感が持てる。カーチスは焦点の普天間問題についても「3月中に移設案を米側に提示して調整に入るべきだ。5月に出して米側が受け入れられないとなれば大問題となる。あと数週間で結論を出して調整する必要がある」と、3月に事実上の結論を出して、米側との調整に入る必要を強調。「2、3カ月前と違って国防省も妥協案をさぐりたい気持ちだ。鳩山さんが自分でリーダーシップを取り、辺野古が一番いいと言えば、いろいろな批判を受けるが、多くの日本人は日米安保の重要性を分かっているので、日米関係を考えた場合、これしかないということになる」と辺野古案を軸とした決着に、期待を滲ませた。
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