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2010-03-09 07:50

与謝野は“主敵”を見定めよ

杉浦 正章  政治評論家
 元財務相・与謝野馨は能吏ではあるが、政治家ではなかったのだろうか。敵前で内紛を起こしてプラスになるのは、民主党だけだ。案の定首相・鳩山由紀夫からは「谷垣頑張れ」の皮肉なエールを飛ばされてしまった。与謝野は大局を見損ねている。問題を谷垣禎一の総裁外し人事などに矮小してはならない。ましてや、新党のめどなど全く立たないのが実情だろう。主敵は民主党にあり、その民主党政権は谷垣の“稚拙”な追及にもかかわらず、支持率を半減させ、長崎知事選、町田市長選で敗退しているではないか。ここは愚直に民主党追及で全党あげて行動を取るときだ。

 与謝野の谷垣批判は、当初から「谷垣には総裁の素質がない」と筆者も書いてきたから、よく分かる。確かに好機を逸している。知事選勝利の波に乗って追及すべきところを、審議拒否だ。若手議員も含めて憤まんやるかたない空気が出るのも無理はない。与謝野が「谷垣辞任か、新党か」と迫るのも無理はない。しかし、すべては自分の責任でもあるのだ。重厚だった与謝野が、最近タレント系の舛添要一並みに見えてきたのは、どうしたことか。先の衆院選で落選の危機が言われてから、急速にそうなった。閣内にありながら反麻生の動きを見せたのを皮切りに、露出度を高めようとしている。選挙で民主党の海江田万里に敗れ、比例代表で復活当選してから、選挙意識で焦りすぎているのではないか。

 谷垣の素質のなさは、総裁選前から明白であったのであり、それなら自ら立候補して総裁を目指すべきだったのではないか。いったん担いだら“おんぼろ御輿”でも担ぎ通すのが政党人としての筋だ。また、田中角栄ではないが、「“おんぼろ御輿”だからいつでも放り出せる」のだ。自民党が今やらなければならないことは、「政治とカネ」「普天間移設」「マニフェスト違反」を一丸となって追及することだ。それしかない。新党結成と言っても、威勢はいいが、失礼ながらめどは立っていないと見る。71歳で、咽喉がんの後遺症で、発言も苦しそうだ。カネもない。新党となれば百億単位のカネがなければ、国民新党や、みんなの党並みの、超ミニ政党に終わるだけだ。とてもカネが集まる状況にないし、与謝野にカネが用意できるか疑問だ。

 自民党の支持率が上がらないことを、与謝野も枡添も強調するが、プロの見方を言わして貰えば、まず自民党が民主党の支持率を半減させたことに注目すべきではないのか。その半減した票が一挙に自民党に流れると思う方が、甘いのだ。衆院選を総括すれば、自民党嫌いに凝り固まった国民の投票行動が民主党に向かっただけだ。まだまだ自民党アレルギーは消えていない。国民の自民党嫌いは構造的なものであり、与謝野や枡添自身にも責任があることだ。総選挙前の政党支持率も民主、自民両党は大差なかった。自民、民主の総得票数も大差はなかった。わずかの移動が勝敗を決したのだ。もし「小沢辞任カード」が切られれば、一挙に民主党が支持率を盛り返す要素もある。ここは「谷垣更迭」の“小細工”で対応できる場面ではない。

 さらに注目すべきは、朝日新聞や民放の調査では、民主党を離れた浮動票が、自民党に回帰していることだ。朝日新聞の投票先の政党調査では、民主党と自民党の差が狭まってきている。「いま投票するなら」が前回の民主36%、自民23%から、民主34%,自民27%に差を狭めた。とりわけ無党派層では、「民主に投票する」との回答が16%にとどまり、「自民に」が22%と逆転している。この傾向が長崎、町田で自民圧勝を導いたのだ。せっかくここまで持ってきて、今内紛を起こす時か。内紛を起こす者は、私利私欲で動くと見られても、仕方があるまい。政局は野党にとってまさに絶好の追及材料が山積している千載一遇のチャンスなのだ。与謝野も、枡添も、離党するのは自由だが、大局を見ていないことがやがて分かるだけだ。第一“おんぼろ御輿”を降ろす抗争で生じるマイナスと“おんぼろ御輿”でも担いで追及することのメリットを差し引きすれば、明らかに担いで追及するほうに分があるし、実績も既にある。“おんぼろ御輿”はいずれ時期を見て降ろせばよい。
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