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2010-04-28 22:53

(連載)問題のある鳩山総理の普天間問題への対応(1)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 鳩山総理は『ワシントン・ポスト』紙で「いかれている」(loopy)と評され、4月21日の党首討論では、自ら「愚かな総理かもしれない」と認めると同時に、「(辺野古沖への移転で決着させておれば)どれほど楽であったか」と述べ、「5月末までに決着させる」と発言した。4月23日には、参議院本会議で「すべての政策に職を賭す覚悟で臨んでおり、普天間の移設先の問題も当然含まれる」と発言した。私は参議院本会議の発言を聞いて、総理は5月末に辞職するつもりなのではないかと考えたが、鳩山総理の言葉には残念ながらその重みがないので、よくわからない。

 鳩山総理の普天間問題についての対応には、次のような諸問題がある。第1の問題は、政権が交代したからといって、政府間の約束、合意を反故にしてよいという国際慣行はないということだ。合意は守られるべきである。合意と言うものは、別の新しい合意によって置き換えられない限り、期限付きの場合は別にして、有効であり続ける。その基本を踏まえず、日米合意を反故にしておいて(つまり、信頼関係を壊しておいて)「日米信頼関係のなかでこの問題を解決する」などと言い続けてきたことである。

 『ワシントン・ポスト』紙の記事は、政権内の高官の意見を反映したものであるが、一理ある。ASEAN諸国のなかには、この総理の姿勢を見て、これまでの政府間合意が政権交代で反故にされるのではないかと懸念し、とはいえ改めて確認に行って、藪蛇になってはかなわないから、黙っている、との対応をとった国もある。

 約束を守ることは、信頼関係の基礎であり、その基礎を壊して、「信頼を構築する」などと言っても、それは土台無理だと言うことが、なぜわからないのだろうか。党首討論で「日米合意通りやっていたら、楽だった」と発言したが、総理本人が楽かどうかなどは問題ではない。日本の国際的信用と安全保障のために何がよいか、悪いかの問題である。第2の問題は、実現の確たる見通しをもたずに、県外移設を言い出したことであり、それは無責任のそしりをまぬかれない。同じことがCO₂の25%削減目標についてもいえる。政治は可能性の技術であり、夢を語るだけでは、政治にならない。(つづく)
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