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2010-05-11 18:05

(連載)韓国哨戒艦「天安」の沈没(2)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 ただ、北朝鮮の関与が今後明らかになる可能性があること自体が、既に朝鮮半島情勢に影響を与えている。第1に、6カ国協議再開に向けての協議は、米朝間であれ、その他の国も関与するものであれ、この問題が決着するまで事実上不可能になった。第2に、北朝鮮・韓国関係は、調査結果が出るまで、改善する方向では何の動きも出来なくなった。韓国世論は、そういうことには拒絶反応を示すであろう。第3に、米国は韓国の調査を支援する一方、韓国と共に中国に調査の状況を伝えている模様である。中国はいまのところ情報提供を受けているだけのようであるが、金正日の5月3日より7日までの訪中にどのような影響を与えたかが、今後注目される。

 北朝鮮の関与が判明した場合、韓国はどのように対応することになるのか。第1に、韓国は国連安保理に本件を提起することになろう。北に対して非難声明、制裁決議などの対応を求めることになろうが、北朝鮮は既に核問題で制裁を受けているので、これに加えて、どういう制裁が可能なのか、という問題がある。非難声明だけでは、韓国世論は納得しないであろう。第2に、韓国としては、北朝鮮に対し謝罪、再発防止を要求することになろう。これに対し、北朝鮮が責任を認めることは考えられず、外交はこう着状態になり、南北関係にかなり大きな障害が出てくることになる。第3に、韓国による自衛権の行使も時が経ちすぎて困難である。報復、復仇行為は第2次朝鮮戦争になりかねず、米韓共に慎重であろうし、国連憲章上、許容されるかの問題もある。

 46名の兵士が北朝鮮に殺されたのに、李大統領は何も出来ないのか、という不満が韓国内で出てくることは確実で、李大統領は困難な決断を迫られることになるだろう。その内容は、安保理での審議、北朝鮮の韓国への対応にもよるので、今は予断できるものではない。なお4月26日、李大統領は46名の兵士の合同焼香所を弔問した。4月29日には、救助に向かい、別の事故にあった船舶の乗組員も対象にした合同慰霊が行われ、李大統領はこれにも出席した。(おわり)
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