国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-05-13 21:06

イランの民主化支援を躊躇するオバマ大統領への疑問

河村 洋  親米NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 イランは、核拡散の脅威、イラクとアフガニスタンの反乱分子への影響、パレスチナとレバノンのテロリストとの関係、地域安全保障への影響もあって、オバマ政権の最重要外交課題の一つである。しかし、イランの市民が昨年6月の大統領選挙での不正に対して立ち上がった際に、オバマ大統領は彼らへの支援には非常に消極的であった。オバマ大統領は、1953年のイギリス・イラン石油紛争にアメリカが介入してイランのモハマド・モサデグ首相を政権の座から引きずり降ろしたことを非難したように、アメリカに自信を持っていないのかも知れない。しかし、スターリンが引き起こした1946年のイラン危機を考慮すれば、冷戦が最も深刻な時期にソ連カードを利用したモサデグこそが、事態の責めを負うべきなのである。

 イギリスのサッチャー元首相の外交政策スタッフであったナイル・ガーディナー氏は、カイロ演説に見られるようなオバマ大統領の謝罪姿勢を批判している。ガーディナー氏は「世界に必要なのは、アメリカの強い指導力であって、カーター的な謙虚さではない」と述べている。「外交政策イニシアチブ(FPI)」のジョン・ヌーナン政策顧問は「外交努力は、イランの民主化を求める市民運動への支援と並行して行なわれるべきだ」と主張している。「さもないと、イランは北朝鮮の二の舞になってしまう」と言うのである。

 オバマ大統領は、市民運動を活発化させずにイランの神権体制との合意形成を模索しているのかも知れない。しかし、カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員は「今日の圧政国家は、たとえ全ての圧政国家とまでゆかなくても、自分達だけは安全でいられるような世界を模索して、その外交政策を追求している」と記している。 よって、私は、中国の楊潔篪外相が言うような「交渉は論理に基づくべきで、圧力を頼りにすべきではない。交渉と圧力が同時並行で行なわれるなら、こうした交渉には前進の余地がない」という考え方には同意しない。アメリカは自由を求めるイラン国民と緊密な協力の下に圧力を行使する必要がある。

 実際に、レザ・パーレビ元イラン皇太子は「イランの現体制こそが問題だ」と述べている。パーレビ氏は「シーア派独裁体制への国民の怒りは、かつてない水準にまで高まっている」と語る。オバマ大統領の政策に同意するか否かは別にして、オバマ大統領がイラン核問題に真剣に取り組んでいることには疑いの余地はない。先の核安全保障サミットで日本の鳩山由紀夫首相が、普天間基地問題をオバマ大統領と話し合おうと10分間の会談を行なったにもかかわらず、会談内容のほとんどはイランに関してであったという。米国にとっては、ロシアや中国を相手にして技巧を凝らした外交を展開するのも、イラン問題への対処の深謀遠慮の一部分であるからに過ぎない。アメリカにとって自由の価値観を共有するイランの市民達を支援することは重要である。オバマ政権は、合衆国の国家としての基本に立ち返り、ソフトパワーの強化に努める必要がある。イランは非常に重大なケースであって、そこで問題になっているのは、核不拡散だけではない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム