国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-05-17 02:21

(連載) オバマ大統領のクリーン・エネルギー開発政策について(1)

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 オバマ大統領は2008年の選挙運動中、「海底原油掘削は、短期間でガソリンの値段を下げたり、国民の生活を潤すような効果はない。従って、清浄な環境づくりに向けたクリーン・エネルギーの開発を推進する努力をする」と述べている。しかし、今年3月30日の演説では「海底原油掘削を拡大する」と宣言した。4月20日に発生したBPの事故は、エネルギー政策で海底原油掘削を強烈に支持する共和党とのバランスを図ろうとするオバマ大統領の党派を超えた政策が、皮肉な結果になってしまったといえる。

 しかし、5月14日、MSNBCテレビは、オバマ大統領が、原油流出事故に関する議会聴聞会でブリティッシュ・ペトロリアム(BP)、ハリバートン、トランスオーシャンの3社がお互いに責任のなすりあいをしたことに対して、怒りを表明したスピーチの模様を伝えた。オバマ大統領は、1日も早い原油漏れの清掃の完了と被害にあっている沿岸地域の経済の回復の必要性を強調し、住民が通常の生活に戻るまでは、彼らと苛立ちをともに分かち合う姿勢であることを明白にした。スピーチの要点は、この事故の責任の一端が、適切な環境への対応なくして海底原油掘削を許可した政府にもあるため、今後2度とこのような被害を発生させないとした点、今回の例は安全性機能に落ち度があったためであることが明白であることから、今後は環境への新たな安全対策規制を強化するとした点、環境への安全性が明確になるまでは、新たな海底原油掘削は許可しないとした点、および今後も国内原油掘削はエネルギー政策の一部であるが、総体的にはクリーン・エネルギー及び効率的エネルギーの開発を強力に推進するとした点、などであった。
 
 オバマ政権が、現在でもクリーン・エネルギーの開発を強調している点においては、基本的には当初の方針に変化はなさそうだ。昨年の春、カリファオルニア州立大学で、アメリカ政府が取り組んでいる環境とエネルギー開発の問題を研究する機会があった。その際、アメリカの燃料資源政策における様々な結果的矛盾点、及びクリーン・エネルギーの開発が遅れている理由について考えるきっかけとなった。
 
 アメリカは、政府の燃料資源政策のひとつとして、ガソリンに代わる新しいバイオ燃料であるエセノールを2001年頃から多量に生産している。其の為、エセノールの原料として使用される膨大な量のとうもろこしの生産を強化している。また、とうもろこしやサトウキビから生産されたバイオ燃料を多量に輸入することで、ガソリンに代わる燃料を確保することをめざしている。これは結果的に食品値段の高騰につながっている。なぜなら、人間や家畜に与える農作物を燃料として使用すれば、人間の食として供給される農作物は不足する傾向になるため、当然値段は高騰するからである。また、エセノールの生産は、温室効果ガスを減少させるための環境対策でありながら、一方では、エセノールを生産する土地を拡大するため、アマゾン川領域の熱帯森林の木材を伐採して自然を破壊し、飢餓問題を誘発しているという矛盾を生じている。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム