国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-07-12 22:54

「G8」と「G20」の役割分担を考えよう

河村 洋  親米・国際介入主義NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 2008年の洞爺湖サミット以来、サミットは、設立当時のフランスのバレリー・ジスカールデスタン大統領による基本理念からかけ離れてしまったのではないか、と私は疑問を抱いてきた。本来のサミットは、主要先進民主主義国の首脳が官僚の介入なしに自由な討論を行なう会議であった。現在では、サミットは巨大化し過ぎてしまい、会議の準備と治安に膨大な金額と人員が費やされている。全世界の左翼からの厳しい批判を受けて、サミットはG8からG20に拡大し、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカの新興諸国も参加するようになった。しかし私は、拡大したサミットでは拘束力のある共通の合意に達することは難しいと懸念している。また、大規模な国際会議は、開催都市に大きな負担を強いることになる。現在のサミットには、南の国々も参加するようになったが、それでも左翼の暴虐行為は止まず、開催都市の住民は暴力の脅威にさらされている。

 よって、サミットは、より一貫性があり、より効率的で、小規模なものにする必要がある。今年の6月に開催されたムスコカG8サミットとトロントG20サミットの最中に、カナダのジャーナリストのジェームズ・トラバース氏は『トロント・スター』紙で「G20は、単なる国際経済協調のための会議を超えて、世界の安全保障を主導してゆくべきだ」と述べている。トラバース氏が述べているように、「テロ、気候変動、貧困、金融危機といった21世紀の問題により多くの国が参加する必要がある」ことは、確かである。G20の方がG8よりも世界経済の運営で正当性を訴えやすいからである。しかし、それはまた、サミットの拡大が必ずしも質の向上につながらないことも意味する。

 トロント大学G8リサーチ・センターのエラ・ココティス氏は、6月25日放映のロシア・トゥデーのインタビューに応じ「G8とG20の間には役割分担がある」と述べている。「G8は、北朝鮮やイランでの核拡散のような政治的安全保障、アフリカ開発、気候変動の議論の場だ」という。他方で、「G20は世界経済のあり方を模索する場だ」という。金融危機以来の世界経済の運営には新興諸国の参加も必要かも知れない。ただし、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスの故スーザン・ストレンジ名誉教授の理論を適用すれば、新興諸国には自分達の要求を他国に受け入れさせる「関係的な力」はあっても、多様化し複雑化するグローバルな問題に対処する「構造的な力」はない。新興国には世界政治の体制作りのために自分達の影響力を行使する能力はない。

 拡大したサミットは、毎年行なわれる「サミットのためのサミット」になりかねない。サミットをより一貫性があり、より効率的で、小規模なものにするためには、毎年開催されるサミットはG7ないしG8にとどめ、G20は必要に応じて(アド・ホックに)開催すればよい、と思われる。ここでG7と言ったのは、アメリカのジョン・マケイン上院議員とジョセフ・リーバーマン上院議員が主張するように、ロシアのG8加盟資格には疑問の余地があるからである。ともかく、サミットの小規模化よって開催都市の負担と会議への官僚の介入は減らされるだろう。参加国を拡大しても、限定しても、左翼の不平分子が不満を訴えることに変わりはない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム