国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-07-30 10:15

(連載)オバマ外交で脆弱化する世界の安全保障(2)

河村 洋  親米・国際介入主義NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 確かにオバマ大統領には全世界の人々を惹きつける独特の魅力があるとは言える。しかし、それはアメリカ外交にプラスとなるのだろうか?全世界の左翼が狂喜したのは、多くの人々が感じているように、オバマ氏に「非アメリカ的」な側面を見出したからである。しかし、今やオバマ大統領は合衆国大統領として振る舞わねばならない。大統領は、アフガニスタンでのテロリストの打倒、イランと北朝鮮への核拡散の阻止、大国としての自己主張を強めるロシアと中国への対応で断固とした態度を示さねばならない。リベラル派の論客達は、オバマ氏の「チェンジ」を称賛しているが、カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員は「ジョン・マケイン氏も、グアンタナモ収容所の件に代表されるように、ブッシュ政権の政策を一部変更しようとしていた」と指摘している。

 リベラル派は、共和党批判にとらわれる余り、オバマ氏を過大評価しているのである。よってオバマ外交に公正な評価を下す必要がある。このイベントで議論された問題を個別に振り返りたい。このイベントの冒頭では、オバマ政権での外交政策の刷新が議論された。マシューズ氏とブレジンスキー氏はプラハ演説とカイロ演説に深く感銘を受けたようだが、ロバート・ケーガン氏は「オバマ外交は、アメリカ外交に見られる道徳主義と理想主義の伝統に従っている」と述べた。問題点として私が指摘したいことは、オバマ氏の理想主義がきわめてウィルソン・カーター的なことである。

 このパネル・ディスカッションで最も重要な議題となったのは中東問題で、アフガニスタン、イラク、イラン、パレスチナがとりあげられた。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ元財務相は「軍事関係機関と社会経済関係機関の連携がうまくとれていないために、反乱分子鎮圧作戦の進展が妨げられている」と指摘する。ガニ氏は「契約に基づいて開発事業の運営を行なうだけのUSAIDでは、経済再建事業には充分に対応しきれない」と語った。また、パキスタンにあるテロリストの根拠地も事態をさらに複雑にしている。マシューズ氏に代表されるリベラル派は、オバマ氏に目標設定を下げて勝利の再定義を行なうように主張しているが、ケーガン氏に代表されるネオコンは、「正しい戦略を採れば、この戦争での勝利は可能だ」と主張する。

 ともかく、この戦争の成功は、オバマ大統領の指導力にかかっている。このイベントは、オバマ氏の最高司令官としての資質を厳しく問いかけたマクリスタル事件より前に開催された。中東では、この他にイランが大きくとりあげられた。昨年6月12日の民主化運動を考慮すれば、アメリカは核問題での対話の継続が有益かどうか再考する必要に迫られている。むしろイランの市民による新体制の対応を支援し、核問題についてより建設的な交渉を行なった方がよいかも知れない。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム