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2010-08-24 11:15

(連載)ゲーツ国防長官はペンタゴンと軍を刷新できるか?(2)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 しかしゲーツ氏の計画に疑問を唱える者もいる。議会調査局で国防政策と予算を担当するスティーブン・ダゲット氏は「統合戦力軍の閉鎖だけで国防予算の抑制はできない」と言う。それは基本戦略の作成や訓練といった一部の業務は、軍の他の部署が引き継ぐからである。国防予算が抑制された状態で、アメリカが世界各地で国家及び非国家アクターの脅威にどのように対処するか、を議論することの方がさらに重要である。バック・マケオン下院議員とエリック・カンター下院議員は「脅威の増大と相互関連の強化に対処するには、統合戦力軍が必要だ」と主張し、ゲーツ氏の計画を批判している。

 この問題は一般に思われているより根が深い。9・11事件の前日に、当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官は「事務作業の外注依存を減らす」などのペンタゴンの官僚機構の構造的改革を宣言した。しかし、テロ攻撃によってラムズフェルド氏は、改革よりも、イラクとアフガニスタンの戦争に労力を振り向けざるを得なくなった。ロバート・ゲーツ氏は、前任者が残した超党派の仕事に取り組んでいる。ペンタゴンと軍の構造改革に加えて、ゲーツ氏はF22ステルス戦闘機やDDG1000駆逐艦などの「冷戦用」の兵器の生産を停止した。しかし、ゲーツ長官は従来の国家対国家の紛争向けの大型兵器と、対テロ作戦のような冷戦後の戦闘に向けた小型で迅速な兵器との微妙なバランスをとらねばならない。

 アメリカン・エンタープライズ研究所のトマス・ドネリー常任研究員は「統合戦力軍は、軍部のセクショナリズムを超えた共通の国防目的の追求という役割を充分に果たさなかった」として、解散そのものには賛成している。しかし「改革によってアメリカの安全が向上するのは、ごくわずかだ」とも述べている。テロの台頭と経済危機によって、軍とペンタゴンの官僚機構と指揮系統の改革が必要となった。しかし、ロシアと中国が再台頭したことで、アメリカは従来からの脅威への対処も怠ってはならない。この改革は前任者から引き継がれた仕事である。ゲーツ氏は2011年の退任までにアメリカの国防政策の行く末の基礎固めを成し遂げられるのだろうか?(おわり)
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