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2010-08-25 07:27

鳩山離反で、小沢は“四面楚歌”

杉浦 正章  政治評論家
 小沢一郎周辺の“小沢擁立”戦略がぼろぼろと崩壊している。小沢自身が民主党代表選出馬の前提条件としている「多数派糾合」どころではない。「軽井沢の盟約」だったはずの前首相・鳩山由紀夫が、8月24日夜小沢に直接「菅支持」を表明、同グループも条件付き「菅支持」で固まった。菅による小沢チルドレンら新人議員との会合も、出席者が156人中半数近くに達し、小沢サイドの締め付けが利いていないことを物語る。実態的には、小沢は追い詰められた形であり、窮鼠猫を噛んで「暴走出馬」で党崩壊を招くか、満を持して出馬を見送るか、の選択となった。

 小沢擁立グループの基本戦略は、鳩山、旧民社、旧社会党系グループを糾合して、一挙に4グループで主導権を握るところにあった。しかし、世間が成功するかに見たのは、軽井沢の鳩山研修会まで。以後、糾合戦略は崩壊過程にはいった。24日夜の中山義活氏ら鳩山グループの幹部十数人が集まった会合では、「総理大臣が短期間で代わるのは好ましくない、という世論が大きい。小沢氏に出馬を求めるべきでない」との意見が大勢を占めたのだ。中山らは旗振り役の山岡賢次に「不出馬」を申し入れるという。これに連動して、鳩山自身も小沢不出馬での条件闘争へとかじを切った。激突回避で仲介に動いたのだ。これが小沢の第1の誤算だ。

 2時間に及ぶ小沢との会談で、鳩山は「出馬見送り」を要請し、条件について話し合った。条件は、(1)人事で官房長官、幹事長、選挙対策委員長などの交代を求める事の是非、(2)政策面ではマニフェスト回帰をはかることなどであったとみられる。小沢は態度を留保している。さらに、小沢チルドレンの締め付けが利かず、菅との会合出席者は既に67人に達している。第2の誤算である。第3の誤算は、旧社会党、旧民社党系議員の離反だ。小沢と緊密なはずのグループだが、旧民社党系は小沢支持どころか、党副幹事長・吉田治の擁立を検討し始めた。旧社会党系も小沢支持でまとまることは困難となってきている。

 第4の誤算は世論の厳しい批判にさらされ始めたことだ。世論調査で8割以上が「小沢首相」にネガティブとあっては、世論を気にする民主党の体質とも相まって、支持が広がりようがないのだ。こうして小沢はまさに“四面楚歌”の中に置かれたのが実態だろう。読売新聞によれば、鳩山は「小沢さんを傷つけるわけにはいかない。このまま周りが突っ走って代表選に出馬し、小沢さんが党を出るようなことになれば、民主党は崩壊する」と周囲に語っているという。筆者の論理そのままを鳩山が語っている。山岡らによる擁立の動きを強くけん制しているのだが、その裏には「もう勝負あった」という読みがある。要するに、立候補の環境は整わないのが実態だ。ここまで来ると、小沢はやぶれかぶれの「暴走出馬」をして、たとえ負けても数を誇示して条件闘争を続けるか、手勢を引き連れて離党するか、菅政権がねじれ国会で長く続かないと判断して最終戦を持ち越すか、の選択を迫られる形となった。
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