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2010-08-26 07:39

民主代表選は「菅優勢」の潮流

杉浦 正章  政治評論家
 結果として小沢を「進むも地獄」の状況に追い込んだのは、首相・菅直人がしたたかだということだろう。小沢が立候補しても、民主党代表選挙は「菅優勢」の流れが濃厚だ。前首相・鳩山由紀夫の仲介が不調に終わったが、勝つことを前提にする菅が、小沢を幹事長や副総理に据えることはあり得ない。せっかく獲得した多数は、「脱小沢」路線に依存しており、これを帳消しにすることになるからだ。それにしても強制起訴の可能性がある政治家が立候補するとは、自民党時代にもあり得なかったことであり、政治倫理などどこ吹く風の権力闘争が始まろうとしている。ざっと票読みをすれば、菅は衆参議員412人中菅グループ50,前原40,野田30の120人を基盤に、鳩山50の大半と旧社会党系30の80%、新人議員157人の過半数を獲得しつつある。グループに属さない約130人や党員・サポーターも、世論を見て菅に大半が流れるだろう。民主党の票読みは、グループの結束が緩やかで難しいが、小沢が立っても菅が過半数を獲得する方向が強く、続投が可能となることを意味している。

 小沢は、鳩山、旧社会党グループなど「反菅パワー」の結集に失敗したのである。うろたえたとしか思えないのが、山岡賢次ら旗振り役。8月26日に出馬を促すとしてきた方針を急きょ変更して、25日に大挙して小沢の部屋に支持議員らを2度にわたって集結させ、「殿、ご出馬を」とやった。これは危機感を背景にした突出に他ならない。小沢が感涙にむせんだのは、もちろん勝負に勝ちそうな雰囲気を感じたというより、悲壮感を背景にしている。深層心理では「城を枕に討ち死に」を感じているに違いない。小沢グループは鳩山グループの菅支持に対して、「鳩山グループにはしごを外された」と憤まんやるかたないようだが、もともと鳩山は条件闘争で、はしごなど最初からかかっていなかったのだ。読みが浅いのだ。鳩山が挙党体制の条件付きで菅支持だったため、方向転換した場合多少の落ちこぼれはあるだろうが、大半は菅支持だろう。

 菅は、鳩山の「小沢は脱小沢シフトを心よく思っていない」「小沢氏に協力を求めるならば、真剣に求めることが必要だ。『挙党態勢を築く』と言っても、すぐに小沢氏は『わかりました』とはならない」という説得にも、「小沢さんにどう協力を求めるかは難しい」と答えている。新人議員らにも菅は、「挙党一致は大事だが、ときには尖らなくてはならない。挙党体制もバランスを欠いてはいけない」と述べている。これは恐らく鳩山が持ちかけたであろう「小沢幹事長」「小沢副総理」人事への拒絶反応だろう。菅にしてみれば、世論の支持で多数派を形成しつつあるという思いがあり、「脱小沢」を捨てれば、世論の支持を失って、支持率の急落を招き、本も子もなくなる。加えて前原や野田グループの支持も失いかねないのだ。

 こうした事情を背景に、菅は安易な妥協を避け、代表選での小沢との激突も辞さない構えを見せているのだ。鳩山も自らのグループの支持というカードを切ってからでは、菅への説得力も発揮できないことが分かっていない。こうして小沢は進退ままならぬ袋小路に追い込まれたが、出馬してもやぶれかぶれで展望はない。小沢が立候補しようと、しまいと、菅再選への潮流は変わるまい。小沢が本当の政治家なら、ねじれ国会で菅がもっと弱った段階で勝負を掛けるのが本筋だが、満を持すことが出来そうもないようだ。小沢が立候補すれば争点が「政治とカネ」を是認するかどうかと言うところに置かれ、まさに政治道徳・倫理欠如のガチンコとなる。
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