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2010-08-26 00:21

国際会議で反日感情を示す中国人を見て思う

池尾 愛子  早稲田大学教授
 私は中国問題を専門とする研究者ではないので、中国で開催される国際学術会議に参加する直前には、関連するシンポジウムや会議に必ず出席して、中国の最新情報を獲得して、現状をできるだけ肌で感じる努力をするようにしている。最近では、宮本雄二前駐中国大使の講演会に出席した。中国の変化の速度にはめざましいものがある。その中で、変わらず、あるいはひょっとするとますますひどくなるのではないか、と思われる問題の一つに、国民感情の問題がある。

 言うまでもなく、大きな戦争になれば、人々の心に大きな傷を残す。講演会でもふれられたことを私の経験に照らした表現になおすと、アメリカ南部の人々にとって「あの戦争」といえば、南北戦争のことを指す。10年以上前になるが、ミシシッピ州のある大学を訪問したとき、私自身が現地で学んだことでもある。「大学の建物や施設は残った人たちが護り抜いたのだが、そこで学ぶべき若者たちは戻ってこなかった」と。つい最近の出来事であるかのような語りぶりだったことを思い出す。

 私は国際学術会議に招待されたときにしか、中国を訪問していない。日中韓の国際会議への参加が最も多い。数年前、ヨーロッパ人たちが組織したある国際会議に参加したとき、そこで反日感情を示す中国人に出会った。日本人は驚き、不愉快に思ったが、それ以外の人たちも当然、快く思わなかったようだ。こうした事情もあり、「ヨーロッパ人が組織にかかわる中国での国際会議に参加する意思は全くない」と、最近もヨーロッパ人の友人にきっぱりと伝えざるをえなかった。ヨーロッパの人たちもこういう事情を全く知らないわけではないようである。

 最近、中国問題を専門としない研究者たちが、学術会議や集中講義のために訪中する機会が急速に増えてきているようである。講義体験などは間接的に聞き及んでいた。去る7月に、講義をした人から直接、体験話をうかがう機会があった。この9月には、私の同僚とよべる人たちで集中講義に行く人が2人いる。私は同時期に国際学術会議に参加する予定なので、「帰国後、ぜひ情報交換いたしましょう」ということになっている。これは、かつてなかったことである。

 中国の人たちと話をしていると、彼らが「あの戦争」というときには、アヘン戦争になるようである。最初に聞いたときは驚いた。イギリスやヨーロッパ諸国から、中国問題専門家以外の研究者がどのくらいの頻度と熱心さで中国を訪れているのか、よくわからない。増えていることは確かであろうが、ヨーロッパは日本より地理的に遠いことは事実である。中国において、ヨーロッパ人の前で反日感情を示されるのは不愉快である。その感情がすっと反欧感情に転移することもありうるのだろうか、と最近はふと思い及ぶこともある。
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