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2010-09-03 07:03

際立つ民主代表選の“異常性”

杉浦 正章  政治評論家
 党首選挙の候補に対して「小沢さんご覚悟ください」と切り出す記者会見を初めて見た。仮にも首相になり得る候補が、「政治とカネ」の説明責任を問われているのである。強制起訴を「逃げません」と確約させられた事例も、初めてだ。対立候補との激突は通常のことだが、メディアと一方の候補が激突する構図はかってないことだ。それだけ小沢一郎の立候補は、民主党代表選挙の“異常性”を際立たせている。焦点が首相の資質に絞られ、本来あるべき政策論争をかすませてしまっているのだ。記者会見の中心は「政治とカネ」に絞られた。

 鳩山由紀夫が国会で「総理であっても処分は甘んじて受ける」と述べた点をただされて、小沢は「鳩山さんの言葉を引用されたが、私も逃げません」と明言した。検察審査会で起訴相当の議決がなされて、検察が強制起訴に踏み切る場合の対応についてである。「小沢首相」は起訴を受け入れることになるが、この刑事訴追を「逃げる、逃げない」などという論議自体が荒唐無稽(むけい)だ。なぜならまず始めに、「起訴を受け入れない」となれば、吉田内閣以来の指揮権発動となり、民主主義の根幹を揺るがす問題に発展するからだ。

 次に、首相が起訴を受け入れれば、現職首相が刑事被告人となるのだ。刑事被告人が国の最高の政治をつかさどるという空前絶後の状況に陥るのである。政治は直ちにその機能を停止する、と言っても過言ではない。少なくとも国会は動かなくなる。朝日新聞によると、小沢側近は「検察審査会への覚悟も語り、これまで封印してきた考えや理念を解き放った」と喜んだというが、その倫理観欠如は度し難い。問題なのは検察審に関して小沢が「1年余りの検察による強制捜査で不正犯罪はなかった。審査会の皆さんも理解してくれると信ずる」と述べた点だ。現職首相がこの発言をすれば、明らかに審査会への干渉となるが、首相候補の発言としても、政治圧力にほかならない。小沢政治の危険な側面を垣間見せている。

 加えて、国会での証人喚問などについて、小沢は「国会に強制捜査権があるわけではない」と前日に続いて開き直った。検察の不起訴で法的に処理済みとの判断だが、これも問題の所在を理解していない。3人の秘書が起訴されたのは、自らの私腹を肥やすためではなく、小沢のための資金収集が根底にあるのだ。問われているのは、政治道徳と倫理であって、そのための証人喚問であり、政治倫理審査会への出席要求であることが分かっていない。前日小沢が明言した「普天間腹案」なるものが、予想通りいい加減なものであることも明らかになった。「鳩山腹案」に匹敵する醜態である。総じて、代表選の論争が候補の「政治とカネ」に絞られてきており、その次元をかってなく低いものとしている。 
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