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2010-09-17 12:17

9・11テロから9年:夜明けは近い

石川 純一  フリージャーナリスト
 また9月11日が巡ってきた。米同時多発テロを目のあたりにして「これは戦争だ」とブッシュ米前大統領が絶叫してから9年が経過したことになる。2001年9月11日に発生した米同時多発テロは、その後、米軍のアフガン報復空爆、タリバン・アフガン政権崩壊を経て03年3月のイラク戦争開戦につながる。そしてイラクを牛耳ってきたサダム・フセイン政権の崩壊、サダム・フセイン処刑。オバマ米大統領はこの8月31日、米軍の戦闘任務が終了したことを公式に宣言。米軍将兵の犠牲者4000人以上。

 皆目行方が分からないのが国際テロ組織アルカイダの頭目ビンラディンだ。アフガンがパキスタンと国境を接する急峻な山岳地帯に潜伏していると漏れ伝えられるだけだ。が、ともかくも、21世紀初頭を彩った「テロとの戦い」「非対称の戦争」が、これで1つの節目を迎えたことは確かだろう。イラクは、内戦状態に限りなく近い状況となりつつも、何とかこれを乗り切った。国家分裂は免れたのである。アフガンも、山あり谷ありの険しい道のりが続いているが、夜明けは近いと見る。

 これを見るにつけ思い出されるのが、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)が歯を食いしばって乗り越えた1993年のカンボジア総選挙である。日本も文民警察や選挙管理ボランティアの方々の間に、ポル・ポト派によるものと見られる犠牲者をだした。が、総選挙そのものは、ポル・ポト派の妨害がありながらも実現し、75年のプノンペン陥落以来続いていた無政府状態そのものと言っても過言ではないカンボジアの状況に、初めて終止符が打たれた。内戦を予測する向きはあったが、戦火に飽き飽きしていたカンボジア国民の総意が、もはやポル・ポト派の扇情的な宣伝を拒否したと言ってよい。

 さらに、冷戦が終わって米ソ代理戦争という「形式」が、もはや成り立たなくなっていたことも忘れてはならない。これは、中東の湾岸戦争からイラク戦争を経る中で、反米を掲げる独裁政権に武器を供給する国がどこにもいなかったことを考えればよい。ポル・ポト派も、いかにルビーの闇市場で戦費を稼いでいたとはいえ、当然そこには限りがある。総選挙後、プノンペンが各国の経済支援で復興景気に沸く中で、カネの切れ目が縁の切れ目とばかりポル・ポト派は自壊。ポル・ポト自身も中央政権につかまってやがては死亡。

 イラクもアフガンも、まずは治安を維持して健全な経済インフラを育てることだ。そして若者のために雇用の創出を図るべきだ。なぜ武装組織に入るか。他に生活の糧を得ようにも、民兵や暴力団以外カネをくれる所はどこにもないからだ。雇用がちゃんとあるなら鉄砲を持つ者は誰もいない。レバノンが、1975年以来の泥沼の内戦から這い出て今の繁栄を築いたのも、「民兵以外に食う道がある」ということに彼らが気付いたからである。イラクやアフガンに、それが分からないはずがない。
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