国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-10-26 07:36

批判一色の鳩山「引退撤回」発言

杉浦 正章  政治評論家
 出処進退のことわざで言えば、「気の利いた化け物は引っ込む」はちょっとかわいそうだが、「長居するサギは汁になる」くらいが適当か。3歩歩いて前言を撤回してきた前首相・鳩山由紀夫が、次の総選挙に出ないとする“引退公約”をまたまた撤回した。政界、言論界の反応は、まずあきれ、首相時代の「存在の絶えられない軽さ」を思い起こし、せきを切ったように反発する。一人の政治家の進退の「進」に、国論がこれほど一致した例を知らない。秋だからではないが、ものの哀れすら感ずる。

 鳩山が幹事長・小沢一郎を道連れに退陣したのを、日本の政治のためになると喜んだのは、筆者だけではあるまい。とりわけ退陣と同時に「総理大臣たるもの、その影響力を行使しすぎてはいけないと思っている。従って、私は次の総選挙には出馬いたしません」と政界引退を明言したことは、日本人の好きな潔さすら覚えたものである。もっとも「どうせまた変わる」と思ったのも、筆者だけではあるまい。野党が一斉に反発したのはもちろんだが、公明党代表の山口那津男の「前首相の立場の人が進退を翻すことは、国民の信頼を損なう。政治活動を続けることが民主党の役に立つどころか、国民の不信を増加させる。その点の自覚が乏しい」あたりが、一番気が利いた発言だ。

 マスコミも、全国紙から、くだらないコメンテーターに至るまで、批判一色だ。読売新聞は10月26日付の「編集手帳」で、「持病のごとき言葉の軽さには慣れたつもりでも、民主党とは言葉をかくもぞんざいに扱う政党なのか――と、世間はほとほとあきれよう」と、「持病」にさじを投げ、「オウンゴールで敵(野党)に塩を送るつもりならば、その人の「友愛」精神なるものは筋金入りだろう」と、見事に皮肉った。朝日に至っては社説で「前言撤回は残念でならない」と書いた。記事では精神病理学者まで引っ張り出して、「恵まれた環境で育ち、優柔不断の性格で政治をやって来た」「私情と政治判断を混同していることに気づいていない。この程度で政治家になれるのか」とコメントさせている。これも「ほとんどビョーキ」扱いだ。議員辞職や在職中の死を惜しまれた首相は多いが、引退しないことを社説で「残念」と「惜しまれた」首相経験者は珍しい。

 鳩山は「辞めるの、やめた」理由について「党の状況が思わしくないから」と述べているが、党の状況を思わしくなくしているのは、ご本人と盟友・小沢一郎であることをとんと忘れている。国内の反発にハノイで25日「国難といえるときに、自分だけ辞めて『はい、さようなら』でいいのか」と反論した。しかし、普天間問題といい、「政治とカネ」といい、存在自体が「国難」のお方が言う言葉ではあるまい。 小沢は「御輿は、軽くて、パーがいい」が口癖だが、小沢の発想は、ことごとく国を悪くしている。鳩山も、小沢も、いまからでも遅くはないから、「辞めるのを、やめることを、やめる」べきだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム