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2010-10-29 07:43

菅政権は「埋蔵借金」を「増税」の根拠にするつもりか

杉浦 正章  政治評論家
 「スーパー堤防はスーパー無駄」と廃止して、事業仕分け会場には大きな拍手が湧いたが、なぜか空しい。日本版万里の長城のような愚策を劇場型パフォーマンスで大見得を切って処理する話ではない。粛々と予算編成の閣議決定で対応すればよい問題ではないか。社会資本整備特会も廃止の新聞見出しが躍るが、「利権」や「埋蔵借金」が国交省から財務省一般会計に移るだけ、という側面をどうする。「埋蔵金」発掘はせいぜい数百億、特会の累積借入金残高が10年度末に総計315兆。政権は「埋蔵金」発掘をあきらめ、やぶ蛇のように出て来た「埋蔵借金」を根拠に、「増税」を目指すつもりなのか。

 そもそも民主党は総選挙のマニフェストで一般会計と特別会計を一体的に見直せば、最終的に17兆円近い財源を生み出せるとしてきた。これが事業仕分けの原点であり、名分であったはずだ。しかし過去2回の仕分けで出た財源は、たったの7000億円。今回も蓮舫の見開いたぎょろ目が生み出す財源総額は「数百億円」(財務省幹部)だという。さすがに蓮舫も事前に予防線を張り、「期待感はなくしていただきたい」と財源論に論調が集中することをけん制している。おまけに仕分けでは、あの前厚労相・長妻昭の年金記録対応の特別会計がやり玉に挙がり、予算が削減されるという事態に至っている。自民党政権時代の無駄遣いを洗い出すためのパフォーマンスが、ネタ切れで民主党政権自身のあら探しに移行した。このため出席した政務3役も、もっぱら自分の役所の防衛に回るケースが生じている。

 これが政治主導の実体なのか。蓮舫と同様に、首相・菅直人も財源論を否定して「徹底的に中身をオープンにすることだ」といつの間にか論議をすり替え始めた。これでは、要するに事業仕分けとは民主党政権の「勉強会」だったと言うことになる。勉強のためにタレント議員を前面に押し出して、パフォーマンスを繰り返し、血税を使う。予算の組み替えには役にたたない。何をか言わんやである。わずか1時間足らずで、組織の存廃などについての結論を出す、という手法自体に無理があるのだ。4月に廃止が決まったはずの「国立大学財務経営センター」は、なぜかいまだに存続している。それどころか、文科省は予算要求を70億円増額している。文科相・高橋義明は「堂々と主張する」とマニフェストなど念頭にない。事業仕分けには、法改正を伴う問題も多く、いったん“成果”のように国民に印象付けても、ねじれ国会での成立は保証されていない。いつ実現するか分からないのだ。

 もともと特会も、埋蔵金の多くは既に「発掘済み」なのであり、民主党の指摘した17兆などという数字は、口から出任せであったのだ。それがようやく分かってきたのだろうが、裏で操るのが財務省だ。膨大な「埋蔵借金」が白日の下に照らし出され始めたことにより、増税論議にプラスの作用をもたらすからだ。蓮舫は「誰がどうやって返すのかの論議は堂々とすべきだ」と開き直っているが、堂々とする論議は増税しかない。財務省に利用されていることが分かっていない。筆者は、はじめから事業仕分けのパフォーマンス性を指摘してきたが、特会の仕分けの意味するところは、やはり政権の根底にある欺瞞(ぎまん)性、虚飾性の体質だ。弁慶の大見得でなく、地に足の付いた論議こそが財政危機の現在に必要なのだ。
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