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2010-11-10 09:41

(連載)分裂する米議会は、政治の成果を出せるか (2)

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 つまり、オバマ氏はブッシュ政権以前の減税システムに戻そうとする方針があるようだ。その理由として、「ブッシュ政権時代から続いている大企業を含む富豪層への減税を永久に続けていくことは公正ではなく、これを続けていく為には更に7000億ドルを他国から借りる必要がある」と述べている。共和党は、富豪層も含めた永久的減税を主張しているため、「負債の穴を深く掘り続けることで、次世代の子供達に負債を負わせることになる」と、オバマ大統領は深い懸念を表明している。また、「国の負債減少と中間層の減税は引き続き行うべき、という2点においては、両党は同意している」と述べている。しかし、永久的減税に対するオバマ氏の改革路線に、共和党は強固な反対の構えを見せている。

 一方で、富豪たちを優遇するための永久減税に固執し、他方で、同時に財政赤字や出費も削減するというのは、どのような方法で可能なのだろうか?現在、共和党は、この疑問に対して明確に答えてはいない。近年、共和党議員の多くは、社会保険の民営化やメディ・ケアに充当するお金の削減などの必要性を公言している。1995年、当時共和党下院議長であったニュート・ギングリッチは、メディ・ケアに充当するお金の削減案をビル・クリントン前大統領に提唱し、強引に受理させる為、連邦政府の建物を一時閉鎖させた歴史がある。

 逆に民主党は、民主党の発案によって制定された社会保険、メディ・ケア、医療保険改正法などの分野は、現状を維持する方針のようである。議会予算事務局によると、特に医療保険改正法は「10年間で1430億ドルの連邦政府の赤字削減を可能にする」と推定されている。又、ネバダ州出身の民主党上院院内総務のハリー・リードは、マッカーノの発言に対し、「既に病気を患っている人の保険加入は、保険会社に拒否される。同じ保険内容でも、女性は男性より保険費用が2倍高くなる。更に、何百万人にも及び高齢者がメディケアに依存せざるを得なくなるような状態に逆戻りさせたいのか」と反論している。

 一方、医療保険改正法については、公約通り共和党議員により撤廃のアピールが現在盛んに行われている。「オバマの医療保険改正法」と呼ばれているこの法は、元来共和党が、保険会社や医療ビジネスの利益のためにオリジナル案にかなり手を加えて通過させた法である。しかし、国民皆保険義務に難色を示す人達には人気がなく、共和党の撤廃案を支持する国民も多い。その主な原因は「健康保険改革法は国民の税金を避妊資金に供給する結果になる」、「保険料が高い」、「高齢者がメディ・ケアにアクセスできなくなる」、「税金が増える」などの歪曲された情報に惑わされている人が多いためである。(つづく)
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